マリブのブログ

ニ匹ののら猫と一緒に随時三匹の飼い主を募集中の元帰国子女。。オススメの映画やドラマの感想を徒然に紹介しています。

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映画『ア・ゴースト・ストーリー』の私的な紹介―V・ウルフが描いた魂の世界―



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A Ghost Story/2017(アメリカ)
監督・脚本:デヴィッド・ロウリー
出演:ケイシー・アフレック、ルーニー・マーラ

 珠玉の幽霊ファンタジードラマ 

タイトルから想像するとホラー映画の様ですが、中身は全くの別物。

実は霊魂の意義を描いたこの作品は『21グラム』のそれにも大分近いテーマではありすが、まるで絵本から飛び出してきたような実態のゴーストには何故か哀愁が漂います。

 

1980年生まれと若く、編集技師までこなすデヴィッド・ロウリー監督が『セインツ -約束の果て-』で起用したケイシー・アフレック、ルーニー・マーラ両名と再びタッグを組んだこの映画は、それまでの幽霊の常識を覆す怪作。

ケイシー・アフレックは『マンチェスター・バイ・ザ・シー』で第89回アカデミー最優秀主演男優賞を受賞、ルーニー・マーラはあの『ドラゴン・タトゥーの女』で全身ピアス女を演じた超技巧派ですが、この作品での二人の会話は殆どありません。

その理由は、、

この映画が幽霊モノに見せかけたかなりスピリチュアルな作品である事。

 

ワンカットを大分長く回す冒頭で違和感を感じる方も多いでしょうが、インタータイトルにあるV・ウルフの著書『幽霊屋敷』の一節が、作品の世界観を物語ります。

 

V・ウルフ(ヴァージニア・ウルフ)とは

1882年生まれのイギリスの小説家。20世紀モダニズム文学の主要な作家の一人。『ダロウェイ夫人』 (1925)、『オーランドー』(1928)、『波』(1931)などの代表作のほかに、「女性が小説を書こうとするなら、お金と自分だけの部屋を持たなければならない」という主張の評論『自分だけの部屋』などで評論家としても知られている。

59歳の時に躁うつ病から入水自殺を図り死去するが、死後の人間の意識の存続を信じる考えを持ち、『現代小説論』の中でアーノルド・ベネット、H.G.ウェルズ等を物質主義者と批判した上で、自らを精神主義者(spiritualist)であるとしている。

wikipediaからの抜粋

 

ストーリーは正にこの彼女の概念をベースに描かれていきますが、その表現技法はあまりに独特。

タイムラプス効果やCG処理等を一切行わず、霊魂の立場から見せる描写で作品全体に漂うゆったりとした時の流れを見事に実現させています。

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―――ダラス郊外に住居を構えた作曲家のCとその妻・M。
ふたりは仲睦まじい夫婦だったが、ある日自動車事故でCは突然死んでしまう。
悲嘆に暮れる彼女の側でCは白い布を被ったゴーストとなり、何時までも彼女の側を離れようとしない・・

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 彼女が残したメモ

ゴースト化するケイシー・アフレックが撮影中殆どこの白いシーツを被って佇んでいた事を想像するとちょっと笑えてしまいますが、物語は至ってまじめ。

 

人類が未だ推し量る事の出来ない霊の存在を、ストレートに問いかけます。

 

宗教的な概念やゴーストのデフォルメ、更にはカットバック一つで壮大な意識の流れを描く潔い演出には、最早文学の様にも感じられてあまりに幻想的。

 

人の魂はどうやって消滅するのかという究極の謎に思いを馳せながらも、声を発せずただ立ち尽くすだけのゴーストに物悲しさが募ります。

 

味わい深い挿入歌はまるで霊たちへのバラードの様な詩情をそそり、近年の様々な映画やドラマに登場する霊=怨念を抱くものという図式を真正面からひっくり返す監督の手法は極めて秀逸。

 

更に、、

この映画は必ずもう一度見返したくなるトリックが施されています。

それはラストの彼女のメモの謎を二度目の観賞時に種明かしするという極めて斬新な方法で、その事実に気付いた時の切なさはひとしお。。

 

霊に対する怖さよりも、一際その寂しさと情動に感情移入出来てしまうこと間違いない秀作です。

※尚、作品公開後、この記事はネタバレありで加筆していきます。

 

「ア・ゴースト・ストーリー」2018秋公開予定です。

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