マリブのブログ

ミネルヴァの梟は迫り来る黄昏に飛び立つ

Recomend

映画『劇場』の私的な感想―メリーバッドエンドな純愛哀歌から送られる無限ループのラブレター―(ネタバレあり)

Gekizyo/2020(日本)/136分 /又吉の原作小説 /まるで、アルミ箔を奥歯でおもいきりかみちぎってしまった時の様な鈍い感覚が何時までも残り続け、自分はこの映画を観てから半月近くも途方に暮れてしまっていた。 演劇とはなんだろう? 彼らはただ人にも…

映画『はちどり』の私的な感想―愛のない世界で叫ぶ少女―(ネタバレあり)

벌새/House of Hummingbird/2020(韓国)/138分 /言葉に出来ない想い /言葉に出来ない想いを表現するのが映画だ。 その上で、この作品ほど、文字に起こすのが困難な映画もめったにない。 新進気鋭の女流監督キム・ボラが、その少女期を自叙伝の様に綴っ…

映画『ドニー・ダーコ』の私的な感想―銀色の兎の新解釈と孤独を癒すパラダイム―(ネタバレあり)

Donnie Darko/2001(アメリカ)/113分 /新世紀最高のカルト映画 /ストレス加担のコロナ自粛の影響は、冷静になってみると、自分にとってそんな悪い事じゃないかもしれない。 現にこんな事でもなければ、新世紀最高の超難解カルト映画と呼ばれるこの作品…

Netflix『イントゥ・ザ・ナイト』のキャスト紹介と私的な感想―ポールシフトで滅亡する人類。ベルギー産SFディザスタードラマ―

Into the Night Season1/2020~(ベルギー) /醜態をさらしながら団結する人類 “イントゥ・ザ・ナイト”=“夜へ・・”という直球なこのタイトル通り、このドラマの登場人物達は、只管夜を目指します。 そのエポックであるシーズン1は、エピソードも全6話と…

映画『初恋』の私的な感想―三池ワールドの時代が駆け巡る。歌舞伎町ロマンスから零れ落ちる本物の純愛―

FIRST LOVE/2020(日本)/115分 /愛憎渦巻く真のエンターテインメント / 三池映画でこんなにもアドレナリンが出まくったのは久しぶりだ。 これぞ正しくザッツ・オール・エンターテイメント! 随所に遊び心もしっかり滲ませながら、ポップでクレイジーな…

映画『ラストレター』の私的な感想―未咲と鏡史郎はなぜ別れたのか?―(ネタバレあり)

Last Letter/2020(日本)/121分 /答辞に込められた思い / 久しぶりに観た岩井俊二の新作は、正直かなりヤバかった。 それは、夢を見続けていた十代の頃に憧れた、紗のかかった映像がすっかり薄くなり、俳優達の止めどない直球の台詞が、劇中に溢れてる…

映画『パラサイト 半地下の家族』の私的な感想―アジア映画初のオスカーの快挙!寿石(スソク)に込められた人の品格と染みついた貧乏の臭い―(ネタバレあり)

기생충/2019(韓国)/132分 /ジャンルに縛られない映画 / メイヤーの法則というものがある。 これは、“事態を複雑にするのは単純だが、単純にするのは複雑な作業である”という一種の哲学だ。 映画もこの法則の類に漏れず、監督の伝えたい事を単純化する…

映画『最初の晩餐』の私的な感想―もう一つの家族の風景―(ネタバレあり)

The First Supper/2019(日本)/127分 /家族の風景 / 来年の映画賞を総ナメにする熱量はおろか、邦画業界に新風を巻き起こす程の、ぬくもりを感じられる映画だった。

映画『ジョーカー』の私的な感想―アーサーは何故悪意に染まった銃を手にしたのか?―(ネタバレあり)

oker/2019(アメリカ)/122分 /悪の理由を追求する 「人をちゃんと笑わせられないヤツは、人をちゃんと泣かす事も出来ない」 大昔に、某キチ〇イ監督に言われたそんな台詞が、頭の中に木霊する。。 マーベルやコメディ映画を全く見ない自分にとっては、ト…

映画『アド・アストラ』の私的な感想―ブラピが宇宙の彼方で取り戻すもの―(ネタバレあり)

Ad Astra/2019(アメリカ、ブラジル)/124分 /深層世界を掘り下げる宇宙映画 冒頭に登場する痩せた男を、ブラット・ピットと認識する迄に大分時間がかかった。 『ファイト・クラブ』や『セブン』あたり隆々しい顔つきが、未だに脳裏に焼き付いてしまって…

映画『存在のない子供たち』の私的な感想―現実のシリア難民が最期に零す笑顔―

Capharnaum/2011(レバノン)/125分 /シリア内戦下の難民の実態 /大昔、女性に言われた台詞がある。 「人は、誰かに愛されたいから、誰かを必死に愛するのよ」 久しぶりの映画館で観たこの映画の間、そんな言葉が終始、頭の中を駆け巡っていた。

映画『そうして私たちはプールに金魚を、』の私的な感想―偶然にも最悪な少女―

And so we put goldfish in the pool./2017(日本)/27分 /少女達の衝動 /自虐ネタ映画には結構面白いものもある。 人のいい道産子や開放的なウチナンチュー、或いは、頑固でサバけた高知人や気位の高い京都人等、日本人の県民性には、その土地の歴史や…

映画『ザ・バニシング-消失-』の私的な感想―二つの金の卵が暗示するもの―(ネタバレあり)

SPOORLOOS/1988(オランダ/フランス)/106分/ /反社会性パーソナリティー障害を持つ男の真理 /子供の頃、ブランコを漕いでいる友人が、その手を放してしまう妄想を抱いた事はないだろうか? 半円を描く弧が次第に深くなっていき、彼らの目線の位置に大…

『ゲーム・オブ・スローンズ』最終章まで生き残った登場人物を一挙紹介!(シーズン7迄ネタバレあり)

Game of Thrones The Final Season/2019~(アメリカ) /待望のファイナルシーズン到来。 いよいよ、とうとう、ようやくこの時がやってきました。 間もなく全世界同時放送が1年9ヵ月ぶりに再開される、前人未到の仮想歴史スペクタクルドラマ『ゲーム・オ…

映画『ギルティ』の私的な感想―邪悪な蛇を認めた心に宿るもの―(ネタバレあり)

Den skyldige/The Guilty/2018(デンマーク)/88分 /ワンシチュエーションスリラーで見せる人の業 /ワンシチュエーションスリラー映画としては久々の大傑作。 人の持つ善意の裏で蠢く業をくっきりと浮かび上がらせてくる。 『フォーンブース』等に代表…

映画『バーニング』の私的な感想―村上文学で「僕」が抱えていた事―(ネタバレあり)

Burning/2018(韓国)/148分 /韓国人の感情 /エンドロールが流れた瞬間、唸ってしまった作品はかなり久しぶりだ。 村上春樹の世界にどっぷりハマっていたあの頃を、懐かしく思い出す。。 低迷を続ける『ウォーキング・デッド』から、結果だいぶ上手く卒…

映画『サスペリア』の私的な感想―リメイクされた本物のモダンホラー―(ネタバレあり)

Suspiria/2018(アメリカ、イタリア)/152分 /本当の狂気 /ホラー映画のリメイク物は大抵駄作に終わる。 それは恐怖の根本を蔑ろに、進化した映像処理に依存してしまう自分達の悪癖でもある。 78年のホラーの生みの親ジョージ・A・ロメロの『ゾンビ』に…

映画『死の谷間』の私的な感想―ディストピアに生きるアダムとイヴ―(ネタバレあり)

Z for Zachariah/2015(アメリカ、スイス、アイスランド、ニュージーランド)/98分 / 日本人のバイブル /結論から言うと宗教を題材にした映画は結構面白い。 『Mother!』や『コクソン』等の映画でキリスト教を大分批評してきた自分が言うのもなんだが、…

映画『ヘレディタリー/継承』の私的な感想―悪魔パイモンに魅入られた禁断の家族―(ネタバレあり)

Hereditary/2018(アメリカ)/127分/悪魔の存在 /圧倒的な不気味さが漂う作品だ。 老婆の様な顔つきの無表情な少女。断面図的に切り取られる画の構図。 冒頭で死を迎えている老母の葬儀は、主人公である母の闇の儀式の始まりに過ぎない。 この映画の登場…

映画『愛しのアイリーン』の私的な感想―夫となる者へ捧ぐ愛の詩―

愛しのアイリーン/2018(日本)/137分/ 吉田恵輔監督作品の飛躍 /原作のあの難しいテーマをよくこの130分に纏めてみせたのかと感心させられてしまう。 どうやら映画版『ヒメアノ~ル』で見せた吉田監督の才能は本物のようだ。 照明技師上がりの異例のキ…

映画『きみの鳥はうたえる』の私的な感想― 屈託なく笑う石橋静可の笑顔―

きみの鳥はうたえる/2018(日本)/106分 / 屈託なく笑う彼女の笑顔 /こんなにも美しく笑う女優を初めて見たかもしれない。 ビートルズの「リボルバー」に収録されたジョン・レノン作のロック・ナンバーを邦題に起こしたこの作品には、終始その気怠くも心…

映画『羊の木』の私的な感想―バロメッツに暗示された疑う者の正体―(ネタバレあり)

羊の木/2018(日本) /吉田大八監督の渾身の問題作 /吉田大八監督作品の中では、一番難しい作品かもしれません。 犯人捜しのサスペンスの様で、ヒトの業、倫理学にまで踏み込んだこの映画は、是枝組の『万引き家族』にも通じた社会批判を大いに盛り込んだ…

映画『ア・ゴースト・ストーリー』の私的な感想―最期のメモに魅せられた男の魂―(ネタバレあり)

A Ghost Story/2017(アメリカ) / 魂の消滅 /2018年に観た映画の中では、間違いなくNo.1のお気に入りになった作品。 タイムラプス効果やCG処理等を一切行わず、霊魂の立場から見せる世界という発想で漂うような時の流れを見事に実現させたその表現技法…

映画『万引き家族』の私的な感想―樹木希林からの遺言。ワーキングプアの実態―

Shoplifters/2018(日本) /圧倒的にひりついた痛みを感じる作品です。 “平成”の隙間に取り残された闇と“昭和”の温もりとの狭間で、現代社会に埋没している家族の一片を覗き込んでいるような感覚。 「是枝組」というアットホームな家族が紡ぎ出した明確な…

映画『孤狼の血』の私的な感想―実話をモデルにした東映任侠映画史の魂を受け継ぐ者たち―

孤狼の血/2018(日本) /時代の趨勢の中で薄れてゆくヒトの痛み やっぱりこの手の作品には、何時までも日本男児に滾る熱き血潮を感じてしまいます。 久しぶりに映画館で観た邦画でしたが、何とも言えない味わい深い日本人臭さには哀愁を覚えます。 一見男…

Netflixオリジナル『13の理由』の紹介と私的なススメ―自殺に追い込むSNSの闇―

13 Reasons Why Season1/2017~(アメリカ) /ティーンの苦悩とSNSの恐怖 LINEやTwitterで誰かの陰口を呟いた事はありませんか? 規制ばかりでいくら上辺を取り繕っても、万人の心に闇はあります。 親や教師から手を上げられた事もない世代の人達は、その…

映画『メッセージ』の私的な感想―ノンゼロサムの未来―

Arrival/2016(アメリカ) /宇宙映画の概念を覆す秀作 いつか誰かに伝えたかった名作です。 この映画だけは、一人ではなく誰かと見るコトをオススメします。 宇宙モノの映画ですけど主軸は殆ど哲学。 というより、感覚的にはむしろ文学に近いような気もし…

AMCドラマ『ウォーキング・デッド』の私的な紹介―人間の本性を描いた究極の群像劇―

The Walking Dead/2010~(アメリカ) /究極のヒューマンドラマ。世紀末を舞台にした人間達の群像劇 彼是10年近くこのドラマを見続けているでしょうか? 元々ゾンビ映画好きだったんですが、アメリカでゾンビドラマが始まると聞いた時はもうあまりの嬉しさ…

HBOドラマ『ゲーム・オブ・スローンズ』の紹介と私的な感想―これから見始めるヒトたちへ―

Game of Thrones/2011~(アメリカ) / 仮想世界史に夢を馳せる壮大なグレート・ゲーム ファンタジーもの、歴史系のドラマでこんなに観続けられたのは、これが初めてだと思います。 自分にとってはドラゴンも魔女も悪霊も、正直どーでもいいんですが、この…

映画『クラッシュ』の私的な感想―ココロが震える、圧巻の魂の叫び声―

Crash/2005(アメリカ) / 忘れません。この映画は。 この作品を誰かに伝えたくて、著者はこのブログを初めました。 感動というより、見終わった後の胸の奥の小さなぬくもりが今でも忘れられません。 多民族国家を象徴するようなアメリカの、様々な人種が…

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