マリブのブログ

ミネルヴァの梟は迫り来る黄昏に飛び立つ

邦画

映画『劇場』の私的な感想―メリーバッドエンドな純愛哀歌から送られる無限ループのラブレター―(ネタバレあり)

Gekizyo/2020(日本)/136分 /又吉の原作小説 /まるで、アルミ箔を奥歯でおもいきりかみちぎってしまった時の様な鈍い感覚が何時までも残り続け、自分はこの映画を観てから半月近くも途方に暮れてしまっていた。 演劇とはなんだろう? 彼らはただ人にも…

映画『生きてるうちが花なのよ 死んだらそれまでよ党宣言』の私的な感想―コザ暴動から燻る日本人の怒り―

生きてるうちが花なのよ 死んだらそれまでよ党宣言/1985(日本)/105分 /笑いの中の涙 /笑いの中にこそ涙が生まれる事を最初に教えてくれたのは、森崎東という監督だった。 令和に移り変わった現代でも、彼の残してきた映画の功績は偉大だ。 山田洋次の…

映画『MOTHER マザー』の私的な感想―実話に基づく倒錯した聖母の祈り―(ネタバレあり)

MOTHER/2020(日本)/126分 /共感性ゼロのドラマ /大森立嗣という監督の事をもっと知りたくなった。 彼はこの映画で、どんなメッセージを伝えたかったのだろう? スクリーンの中でもんどりうつ様に試行錯誤する主演の彼女はおろか、この映画に出演してい…

映画『Red』の私的な感想―妻であり母である女が気づく時―

Red/2020(日本)/123分 /女の本質 /女はやがて母になる。 男が漠然と妄執するそんな不文律が、この映画を観ると丸ごと掻き消される。。 結婚はゴールでもスタートでもなく、言わば、けじめだ。 愛する者を守ろうとする勇気。一生を支えようと誓う覚悟。…

映画『湯を沸かすほどの熱い愛』の私的な感想―行き場のない情動を抱え持つ女―(ネタバレあり)

湯を沸かすほどの熱い愛/2016(日本)/126分 / 熱い愛を持った女の生き様 / 死ぬ前に、子供に伝えられるコトってなんだろう? “愛”は言葉にすればするほど、軽くなる。 それなら人情とか教養とか、目に見えなくても、その子が自分で将来を切り開ける為に…

映画『初恋』の私的な感想―三池ワールドの時代が駆け巡る。歌舞伎町ロマンスから零れ落ちる本物の純愛―

FIRST LOVE/2020(日本)/115分 /愛憎渦巻く真のエンターテインメント / 三池映画でこんなにもアドレナリンが出まくったのは久しぶりだ。 これぞ正しくザッツ・オール・エンターテイメント! 随所に遊び心もしっかり滲ませながら、ポップでクレイジーな…

映画『AI崩壊』の私的な感想―人工知能は悩む人間に手を差し伸べられるのか?―

AI崩壊/2020(日本)/131分 /悪意のないSF映画 / 悪意のないSF映画を作るのは、結構大変だ。 和製『マイノリティ・リポート』との謗りも多かった割には、この映画は結構鋭く日本人の歪な感覚をついてくる。 AIの暴走なんてテーマは、ハリウッド映…

映画『ラストレター』の私的な感想―未咲と鏡史郎はなぜ別れたのか?―(ネタバレあり)

Last Letter/2020(日本)/121分 /答辞に込められた思い / 久しぶりに観た岩井俊二の新作は、正直かなりヤバかった。 それは、夢を見続けていた十代の頃に憧れた、紗のかかった映像がすっかり薄くなり、俳優達の止めどない直球の台詞が、劇中に溢れてる…

映画『花とアリス』の私的な感想―揺れる女心とビタースイートな思い出―

HANA&ALICE/2004(日本)/135分 /等身大目線の温もり / 岩井俊二の映画は、大抵どれも優しい音色がする。 その中でも、この映画の温もりは未だに冷めやらない。 彼の映画は、殆どと言ってしまっていいほど、説明がない。 駅のホームに佇む少女達の白い息…

映画『ひとよ』の私的な感想―親から子へ受け継がれる因果の法則―

Hitoyo/2019(日本)/123分 /舞台から生まれた儚い親子の戯曲 / “親の因果が子に報う”なんて負の連鎖を象徴することわざがあっても、そこに希望を抱かせてくれるコトバは、どうしても思い当たらない。。 それは、元々仏教国な日本そのもののカルマ(業)…

映画『最初の晩餐』の私的な感想―もう一つの家族の風景―(ネタバレあり)

The First Supper/2019(日本)/127分 /家族の風景 / 来年の映画賞を総ナメにする熱量はおろか、邦画業界に新風を巻き起こす程の、ぬくもりを感じられる映画だった。

映画『楽園』の私的な感想―実話に基く日本の闇、現代に蘇る津山事件の真の恐怖―

Rakuen/2019(日本)/129分 /観念的に感じる恐怖 主観のない映画は胸に響かない。 それは傍観者の観客との距離感が、どうしても縮まってこないから。。 言い換えれば、ビジネス脳的な俯瞰で世界を見渡すと、世の中の危険性はだいぶ薄まるが、その分、相手…

映画『野火』の私的な感想―人間の極地が生み出す地獄絵図。薄れゆく戦争の記憶―

Fires on the Plain/2015(日本)/87分 /戦争映画に求めるもの /終戦から74年の月日が経った。 けれど、この苛烈な戦争映画を見ようとする日本人は滅多にいない。 そんな自分も、この映画に手を出すまでには随分と長い時間がかかってしまった。 あまりに…

映画『アルキメデスの大戦』の私的な感想―菅田将暉の躍動感。戦争が生む集団心理の悲劇―

The Great War of Archimedes/2019(日本)/130分 /戦争映画のメインテーマ /戦争映画にアクションシーンはつきものだが、この映画はちょっと違う。 冒頭でいきなり沈没する戦艦大和のVFX以外に、山崎映画独特の迫力の戦闘シーンは殆どなく、彼の作品…

映画『恋の罪』の私的な感想―東電OL殺人事件に捧ぐ雨の鎮魂歌―

Guilty of Romance/2011(日本)/144分 /渋谷の魔力 /やけに雨が印象的に残る映画だ。 まるで見えない人の何かを洗い流すかのように・・ 四半世紀近く経ってしまったが、この映画のベースとなった未解決事件は、ちょっと忘れられない。。 東電OL殺人事件…

映画『新聞記者』の私的な感想―地上波では放送できない不都合な真実―

Journalist/2019(日本)/113分 /全国公開に漕ぎつけたポリティカル映画 /日本人はとにかく政治に疎い。 そんな中、ローバジェットな皮肉めいた作品ではなく、全国公開でこの手のどストレートなポリティカル映画がようやく日本でも日の目を見れた事は、…

映画『そうして私たちはプールに金魚を、』の私的な感想―偶然にも最悪な少女―

And so we put goldfish in the pool./2017(日本)/27分 /少女達の衝動 /自虐ネタ映画には結構面白いものもある。 人のいい道産子や開放的なウチナンチュー、或いは、頑固でサバけた高知人や気位の高い京都人等、日本人の県民性には、その土地の歴史や…

映画『駅 STATION』の私的な感想―時代に寄り添う演歌の唄声―

STATION/1981(日本)/132分 /演歌に込められてきた日本人の哀愁 /余韻のないものは映画とは言えない。 そんなものを始めに教えてくれたのは、降旗康男という監督だった。 ヒトラーが総統になり、ボニー&クライドが射殺された年に長野の松本市で生まれ…

映画『南瓜とマヨネーズ』の私的な感想―共依存から抜け出せない三人―

かぼちゃとマヨネーズ/2017(日本)/93分 /共依存の中で縺れ合うラブストーリー 原作は未見だったが、この手の共依存の中で縺れ合うラブストーリーは、相変わらず胸が痛くなる。 それが、純粋過ぎて売れないミュージシャンへの既視感なのか、自由なフリし…

令和世代に残したい平成がわかる邦画厳選5選

平成を振り返る邦画5選 /間もなく31年間の平成の歴史に幕が下りようとしている。。 グローバリズム?アベノミクス? なんて、世間にすっかり浸透しているそんな言語も、閉鎖的で隔離された社会で暮らしていると、その辺の恩恵に預かる事は全くない。。

映画『ラブ&ポップ』の私的な感想―トパーズに惹かれた女子高生の真夏の夜のユメ―

LOVE&POP/1998(日本)/112分 / 欠けた者達が集まる街 /失敗から学べることは結構いろいろある。 ことわざでは“怪我の功名”、英語では“comes out smelling like a rose”なんてオシャレな例え方もあるようだけど、思えば自分の人生でもこんな事は日常茶飯…

映画『岬の兄妹』の私的な感想―タブーの限界にまで挑戦した役者魂と映画愛―

岬の兄妹/2018(日本)/89分 /役者魂と映画愛 /変わり映えのないポリコレ感満載の『グリーン・ブック』のエンドロールが流れるや否や席を立ち、“映画の日”にどうしてももう一本観ておきたかったのがこの作品。 演技バカ松浦裕也の久しぶりの新作とあれば…

映画『告白』の私的な感想―痛みを知らない子供達に伝える最後のホームルーム―

Confessions/2010(日本)/106分 /暴力のない世界 /暴力を受けた事のない子供が最近やけに増えている気がする。 アラフォー世代の世迷い言の様に聴こえるだろうが、ネット上の匿名で誹謗中傷が横行する現代では、自分達の頃とはあきらかにその性質が変化…

映画『愛の渦』の私的な感想―裏風俗の闇の中で蠢くヒトのホンネ―

愛の渦/2014(日本)/123分 /曝け出した性欲 /・・あまりにも情けない新井浩文の逮捕に動揺が隠し切れないでいる今日この頃。。 彼ほどピュアな悪役を見事に演じきれる俳優は日本にはそうはいない。 そんな彼が慙愧に耐え、何時か必ず芸能界に復帰してく…

映画『無垢の祈り』の私的な感想―DVD化さえできない禁断のタブー―

Innocent prayer/2015(日本)/85分 /見えない現実 /年明け早々、またとんでもない作品を観てしまった。 胸糞、幼児虐待、R指定と三拍子揃ったこの映画が、まったりとした飽和感の残る正月の吉祥寺UPLINKで再上映されていると知って足を運んでみた。 劇…

映画『渇き。』の私的な感想―加奈子は天使なのか悪魔なのか?―(ネタバレあり)

World of Kanako/2014(日本)/118分 /歪なカタチの執念 /クリスマス・イブの夜から始まるこの物語は、寒い冬場に観ると少し胸が痛くなる。 ホラー映画としては少々トリッキー過ぎた中島監督の『来る』を観て、彼の本質にあるのは、やっぱりハンパない人…

映画『生きてるだけで、愛。』の私的な感想―本物の感覚を求めるふたり―

生きてるだけで、愛。/2018(日本)/109分 / 現代人が抱える孤独 /この作品を独りで観るのはちょっとおススメできない。 それは、言ってしまえば貴方の横に救ってくれる菅田将暉はいないから。。 自分も含め、この手の映画に手が伸びてしまうヒトはきっ…

映画『止められるか、俺たちを』の私的な感想―『カメ止め』で映画界に魅せられた人達へ・・―

止められるか、俺たちを/2018(日本)/119分 / 彼が死んだ日の朝に。。 /まるで自分たちの半生を振り返ってくれたかのような映画だった。 くぐもった閉塞感の中、あの頃抱いていた情熱が静かに蘇ってくる。。 「今日は何の日?」 なんて、ちょっと意地悪…

映画『愛しのアイリーン』の私的な感想―夫となる者へ捧ぐ愛の詩―

愛しのアイリーン/2018(日本)/137分/ 吉田恵輔監督作品の飛躍 /原作のあの難しいテーマをよくこの130分に纏めてみせたのかと感心させられてしまう。 どうやら映画版『ヒメアノ~ル』で見せた吉田監督の才能は本物のようだ。 照明技師上がりの異例のキ…

映画『きみの鳥はうたえる』の私的な感想― 屈託なく笑う石橋静可の笑顔―

きみの鳥はうたえる/2018(日本)/106分 / 屈託なく笑う彼女の笑顔 /こんなにも美しく笑う女優を初めて見たかもしれない。 ビートルズの「リボルバー」に収録されたジョン・レノン作のロック・ナンバーを邦題に起こしたこの作品には、終始その気怠くも心…

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