マリブのブログ

ミネルヴァの梟は迫り来る黄昏に飛び立つ

洋画

映画『ゴーン・ガール』の私的な感想―虚構の夫婦の肖像画―(ネタバレあり)

GONE GIRL/2014(アメリカ)/149分 /本当の違和感 /結婚は理想であっても、現実ではない。 バツイチのまま四十もとうに過ぎてくると、ふとそんな盲信が生まれてくる。 アメリカ・ローリング・ストーン誌が選ぶ“2014年の映画ベスト10”にランクインしたこ…

映画『ドニー・ダーコ』の私的な感想―銀色の兎の新解釈と孤独を癒すパラダイム―(ネタバレあり)

Donnie Darko/2001(アメリカ)/113分 /新世紀最高のカルト映画 /ストレス加担のコロナ自粛の影響は、冷静になってみると、自分にとってそんな悪い事じゃないかもしれない。 現にこんな事でもなければ、新世紀最高の超難解カルト映画と呼ばれるこの作品…

映画『ゾンビランド』の私的な感想―孤独なヤツは救われる?笑える爽快系ゾンビホラー―

Zombieland/2009(アメリカ)/88分 / コメディーだけどちょっぴりホラー / ストレスフルな夜は、ゾンビ映画で発散するのが丁度いい。 コメディーだけどちょっぴりホラーで、観終わった後の絶妙な爽快感を味合わせてくれるこの映画は、全世界の引きこもり…

映画『ナイト・オン・ザ・プラネット』の私的な感想―夜の街に詰め込まれた人間模様―

Night on Earth/1991(アメリカ)/129分 / 奇妙で優しいジャームッシュの世界 / 人恋しい夜には、この映画の事をそっと思い出してみる。 トム・ウェイツの濁声から始まるこの物語は、万人の寂しがり屋へ向けたバラードだ。 ロス、ニューヨーク、パリ、ロ…

映画『コンテイジョン』の私的な感想―ウィルスパンデミック映画から本当に伝染するもの―(ネタバレあり)

CONTAGION/2011(アメリカ)/106分 /プロの映画エンジニア / この作品を、人の不安を煽るスリラー映画とする声も少なくない。 全世界に広がるコロナウィルスの恐怖そっくりそのままの描写は、多少穿った目で見ても、その現実世界とのシンクロ度が極めて…

映画『ナイチンゲール』の私的な感想―銃を向けた鶯達はなぜその引き金を引けなかったのか?―(ネタバレあり)

The Nightingale/2019(オーストラリア)/136分 /アボリジニの歌声 / 自分達が声と認識する“虫の音色”は、白人にとって雑音に聴こえるらしい。 これは古くから自然に畏怖の念を抱く、日本人だけが持つ特殊な感覚なのか。。 実のトコロ、この極めて左脳的…

映画『ディープ・インパクト』の私的な感想―地球最後の日に寄り添う人―

Deep Impact/1998(アメリカ)/121分 /他人に不寛容な時代 / 私的な気持ちを吐き出せば、終末論は突然やってくるものではないと思っている。 新型コロナの感染力やシンギュラリティのように、ある日突然オーバーシュートするのではなく、不安が人の心に…

映画『天国の口、終りの楽園。』の私的な感想―大人へと成長する全ての少年達へ―

Y tu mamá también/2001(メキシコ)/105分 /嘘で固めた心 昔の若者は、みんなズルかった。 恋愛に、友情に、両親への感謝のキモチさえも。 漠然と焦る心をひた隠しにし、どうでもいい小さな嘘をつきまくって、張り詰めた自分の気持ちをそっと塗り固める。

映画『レ・ミゼラブル』の私的な感想―怒りのクラスター連鎖は何を生むのか?―

Les Misèrables/2020(フランス)/104分 /怒りのクラスター連鎖 / 新型コロナの爆発的な感染力が広がりをみせる中で、世界中に広がる不安。 テレビを付ければ、そんな対応の遅れを取った日本政府に対し、浅はかな予備知識と貧困な想像力をひけらかすメデ…

映画『ミッドサマー』の私的な感想―禁忌の異色ホラー。フォークロアに閉じ込めた凶悪な恋心―(ネタバレあり)

Midsommar/2020(アメリカ/スウェーデン)/148分 /禁じ手のホラー映画 / 傍若無人に鬱憤を映画で晴らすアリ・アスター監督がまたやってくれた。 冒頭の意味深なタペストリーから、天地逆転のカメラアングル。 ・・彼の抱える闇は、まだまだ深そうだ。。

映画『1917 命をかけた伝令』の私的な感想―110分間のワンカットで繋がれたもの―(ネタバレあり)

1917/2020(アメリカ/イギリス)/110分 /偏ったカタルシス / サム・メンデス監督の作品は、偏ったカタルシスが強い。 『ロード・トゥ・パーディション』では、疑似親子の確執を。 『レボリューショナリー・ロード』では、幻想夫婦の崩壊劇を。 自身の監…

映画『ヴァンパイア』の私的な感想―愛しくも切ない岩井童話の世界―

Vampire/2011(日本/アメリカ/カナダ)/119分 /岩井俊二初の海外長編映画 / 抽象的な表現の多い岩井映画を、苦手な人は少なくない。 けれど、目に見えるものが全てとは限らない世の中では、どうしても、感覚だけは研ぎ澄ませておきたくなってしまう。…

映画『テッド・バンディ』の私的な感想―史上最悪の殺人鬼を愛した3人の女―

Extremely Wicked, Shockingly Evil and Vile/2019(アメリカ)/109分 /殺人鬼を愛した二人の女 / こんな事を言うと大分誤解を受けてしまうだろうけど、劇中に登場する女達には酷く共感出来てしまう。 ミステリアスな男に、女は何時の世も後ろ髪を引かれ…

映画『マリッジ・ストーリー』の私的な感想―冷静と情熱の間で立ち戻る女の分岐点―

Marriage Story/2019(アメリカ)/136分 /女の分岐点 / この映画を独りで見てしまった事を、後になって酷く後悔した。 “映画は誰かと一緒に見たい!”なんて世迷言は疾うに捨てたつもりだったけど、やっぱり女の分岐点を具に捉えたこの映画は、女性側の視…

映画『アイリッシュマン』の私的な感想―ギャングスターのリアルな不条理の世界―

The Irishman/2019(アメリカ)/209分 /アイロニカルなジョーク / マーベル映画を侮蔑した発言で批判を浴びた、マーティン・スコセッシの気持ちはよく分かる。 カラフルでスタイリッシュに彩られた刺激的なスクリーンの中では、彼らが映画に残したかった…

映画『フラクチャード』の私的な感想―砕かれた男の見る白昼夢―

Fractured/2019(アメリカ)/99分 /砕け散った男 思い込みの激しいオトコが、夜中にひっそり膝を抱え怯えて見るには十分の映画。 自分もその術中にまんまとハマり、気がつけば、ため息が漏れまくっていた。。 世界のホラー映画の巨匠13人なんかにちゃっか…

映画『真実』の私的な感想―見えないものを撮る是枝流のもう一つの真実―

La vérité/2019(フランス/日本)/108分 /是枝裕和の海外デビュー作 ・・すっかり海外市場に目を向けだした是枝監督は、もう、邦画業界に未練はないのかもしれない。。 香港映画『十年』の日本版リメイクをプロデュースし、何かと海外志向が強くなってき…

映画『タクシードライバー』の私的な感想―ジョーカーとトラヴィスの悲観論の違い―(ネタバレあり)

Taxi Driver/1976(アメリカ)/114分 /孤独な男のナルシズム 最近、孤独な男のナルシズムを描く映画が、ちょっと増えてきた気がしてる。 ようやく、世間がメンタル弱い系男子を追い込む恐ろしさに気づき始めたって事? 近代アメコミサイコパスの頂点に君…

映画『テイク・シェルター』の私的な感想―最後の嵐の中に潜む悪夢―(ネタバレあり)

Take Shelter/2011(アメリカ)/121分 /嵐という比喩 嵐になるとこの映画の事をふと思い出す。 若干29歳にして映画監督デビューを果たしてから僅か4年後、こんなにも深い映画を撮ってしまったジェフ・ニコルズ監督には、尊敬の念しかない。 『マン・オブ…

映画『ジョーカー』の私的な感想―アーサーは何故悪意に染まった銃を手にしたのか?―(ネタバレあり)

oker/2019(アメリカ)/122分 /悪の理由を追求する 「人をちゃんと笑わせられないヤツは、人をちゃんと泣かす事も出来ない」 大昔に、某キチ〇イ監督に言われたそんな台詞が、頭の中に木霊する。。 マーベルやコメディ映画を全く見ない自分にとっては、ト…

映画『アド・アストラ』の私的な感想―ブラピが宇宙の彼方で取り戻すもの―(ネタバレあり)

Ad Astra/2019(アメリカ、ブラジル)/124分 /深層世界を掘り下げる宇宙映画 冒頭に登場する痩せた男を、ブラット・ピットと認識する迄に大分時間がかかった。 『ファイト・クラブ』や『セブン』あたり隆々しい顔つきが、未だに脳裏に焼き付いてしまって…

映画『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』の私的な感想―歴史を塗り替えるタランティーノの流儀―(ネタバレあり)

Once Upon a Time in Hollywood/2019(イギリス、アメリカ)/161分 /歴史に消えた悲劇への鎮魂歌 /遊びの過ぎるタランティーノ映画はあんまり得意じゃない。 けれど、彼ほど映画界をまるごと愛してやまない熱狂的なオタクも、そうはいない。。 ブラピに…

映画『ゴーストランドの惨劇』の私的な感想―ハリウッドの惨劇を憂う皮肉な挑戦―(ネタバレあり)

Ghostland/Incident in a Ghostland/2019(カナダ、フランス)/91分 /強い既視感 /短いながらも、随所に強い既視感を感じるスリラーだった。 W主演のエミリア・ジョーンズは“ハリポタ”の頃のエマ・ワトソンそっくりだし、その母親役の歌手・ミレーヌ・…

映画『存在のない子供たち』の私的な感想―現実のシリア難民が最期に零す笑顔―

Capharnaum/2011(レバノン)/125分 /シリア内戦下の難民の実態 /大昔、女性に言われた台詞がある。 「人は、誰かに愛されたいから、誰かを必死に愛するのよ」 久しぶりの映画館で観たこの映画の間、そんな言葉が終始、頭の中を駆け巡っていた。

映画『マーターズ』の私的な感想―アンナの台詞に隠された本当の恐怖―(ネタバレあり)

Martyrs/2008(フランス/カナダ)/100分 /私的なベストスリラー映画 /この映画だけは胸糞なんて言葉じゃ、語りつくせない。 けれど大抵のレビューサイトでは、この映画の核心がイマイチ理解できてないような気がして。。 私的にはNo.1スリラー映画と呼…

映画『ハウス・ジャック・ビルド』の私的な感想―シリアルキラーが築く家族の風景―(ネタバレあり)

The House That Jack Built/2019(デンマーク、フランス、ドイツ、スウェーデン)/155分 /マザーグースの童謡 /何時の頃からか、ユマ・サーマンにはどうしても嫌悪感を感じてしまう。 ・・それが、屈折した自分の留学経験からの、強い白人コンプレックス…

映画『ウィッチ』の私的な感想―魔女の誕生秘話を紐解くシュールな異色ホラー―

The Witch / The VVitch: A New-England Folktale/2016(アメリカ)/93分 /魔女の誕生秘話 /“魔女狩り”と聴くと皆さんは何を思い浮かべるだろうか? ジャンヌ・ダルクの最期?グリム童話の世界? 中世ヨーロッパでは実際に盛んに行われてきたこの異端審…

映画『イット・カムズ・アット・ナイト』の私的な感想―赤い扉を開ける者―(ネタバレあり)

It Comes at Night/2017(アメリカ)/91分 /ホラーの定義 /ホラー映画の定義には色々ある。 物質的や感覚的な恐さを感じられるもの、或いは見る側が心理的な恐怖を感じられるもの。 自分のブログでは、規格外なグロ描写でもない限り、あえて悪魔やゾンビ…

映画『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』の私的な感想―渡辺謙から教わった事、神・ゴジラの誕生―(ネタバレあり)

Godzilla: King of the Monsters/2019(アメリカ)/132分 /芹沢教授の台詞 /ゴジラに政治を持ち込むとちょっとややこしくなる。 無口でコワモテ、それでいて何とも形容しづらいあの咆哮を聴くだけで、日本人がこの映画に秘めてきた哀愁のようなものを感…

映画『オーヴァーロード』の私的な感想―J・J・エイブラムスプロデュースの新境地―

Overlord/2019(アメリカ)/110分 /J.Jエイブラムスの新境地 /J・J・エイブラムスは期待を裏切らない。 本来ならそんな出だしで絶賛したいのだけど、彼にはちょっとした過失がある。 敬愛するドラマ『LOST』の製作総指揮から脚本、監督、音楽まで熟して…

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