マリブのブログ

ミネルヴァの梟は迫り来る黄昏に飛び立つ

秋におススメ

映画『タクシードライバー』の私的な感想―ジョーカーとトラヴィスの悲観論の違い―(ネタバレあり)

Taxi Driver/1976(アメリカ)/114分 /孤独な男のナルシズム 最近、孤独な男のナルシズムを描く映画が、ちょっと増えてきた気がしてる。 ようやく、世間がメンタル弱い系男子を追い込む恐ろしさに気づき始めたって事? 近代アメコミサイコパスの頂点に君…

映画『嘆きのピエタ』の私的な感想―聖母マリアの憎しみから生まれるもの―

피에타/2012(韓国)/104分 /底辺で喘ぐ者 貧乏に理由なんてない。 冒頭からいきなりそんな事を言ってしまうと、なんだか身も蓋もないけど、この映画を見る時は、それぐらいの心構えが必要。 。 日韓関係が露骨に悪化する中で、今更こんな映画に手を出す…

映画『ウィッチ』の私的な感想―魔女の誕生秘話を紐解くシュールな異色ホラー―

The Witch / The VVitch: A New-England Folktale/2016(アメリカ)/93分 /魔女の誕生秘話 /“魔女狩り”と聴くと皆さんは何を思い浮かべるだろうか? ジャンヌ・ダルクの最期?グリム童話の世界? 中世ヨーロッパでは実際に盛んに行われてきたこの異端審…

映画『孤独なふりした世界で』の私的な感想―世紀末に本当の愛はあるのか?―

I Think We're Alone Now/2019(アメリカ)/93分 /孤独を愛する者 /『GOT』のティリオン役でも有名になったピーター・ディンクレイジは、何よりもその小さな背中から嫌みのない強烈な男の哀愁を感じさせてくれる。 それが『ハンドメイズ・テイルズ』でデ…

映画『魂のゆくえ』の私的な感想―宗教に縛られる者が見失っていく事―(ネタバレあり)

First Reformed/2019(アメリカ)/113分 /宗教に捕らわれる者の悩み /この映画のテーマでもある問題をちょっと昔に突きつけられた事がある。 幼少期よりアメリカの片田舎で、敬虔なバプテスト(キリスト教プロテスタントの一教派)の家庭にどっぷり浸っ…

映画『ザ・バニシング-消失-』の私的な感想―二つの金の卵が暗示するもの―(ネタバレあり)

SPOORLOOS/1988(オランダ/フランス)/106分/ /反社会性パーソナリティー障害を持つ男の真理 /子供の頃、ブランコを漕いでいる友人が、その手を放してしまう妄想を抱いた事はないだろうか? 半円を描く弧が次第に深くなっていき、彼らの目線の位置に大…

映画『バーニング』の私的な感想―村上文学で「僕」が抱えていた事―(ネタバレあり)

Burning/2018(韓国)/148分 /韓国人の感情 /エンドロールが流れた瞬間、唸ってしまった作品はかなり久しぶりだ。 村上春樹の世界にどっぷりハマっていたあの頃を、懐かしく思い出す。。 低迷を続ける『ウォーキング・デッド』から、結果だいぶ上手く卒…

映画『サスペリア』の私的な感想―リメイクされた本物のモダンホラー―(ネタバレあり)

Suspiria/2018(アメリカ、イタリア)/152分 /本当の狂気 /ホラー映画のリメイク物は大抵駄作に終わる。 それは恐怖の根本を蔑ろに、進化した映像処理に依存してしまう自分達の悪癖でもある。 78年のホラーの生みの親ジョージ・A・ロメロの『ゾンビ』に…

映画『パリ、ただよう花』の私的な感想―揺れ動く情動。セックスで求めあうもの―

Love and Bruises/2011(フランス/中国)/105分 / 完全に自立していく女 /夢を見させてくれる反面、残酷な現実を容赦なく突きつけてくるのも映画の醍醐味だ。 フランス映画のシェードに覆われ情緒的に描かれてはいるが、セックスシーン満載のこの作品の…

映画『レオン』の私的な感想―極限の偏愛で繋がる男の儚い夢―

Léon/1994(フランス)/133分/ 不器用な愛情表現の示し方 /自分は昔からあまり恋愛映画を観れない。 きっとそれは、そこに真実の愛のカタチをみつける事が出来なかったからだろう。 それじゃ、真実の愛とはなんなのだろうか?

映画『HOSTILE ホスティル』の私的な感想―異形の世界で繋がる究極の愛のカタチ―

HOSTILE/2018(フランス)/83分 / 永遠の愛のカタチを模索するロマンス 久しぶりにじっくり考えさせられる映画を見た気がする。 ポスターにある主演のブリタニー・アッシュワースが抱きしめる異形の生物の正体は、勘のいい方なら案外直ぐに分かってしまう…

映画『クワイエット・プレイス』の私的な感想―正体不明のクリーチャーが包み込む沈黙―

A Quiet Place/2018(アメリカ)/95分 /リアルな質感が揃った究極のサバイバル /円あって試写会で見せてもらったのだが、中々に斬新で秀逸なスリラー。 タイトルの“クワイエット・プレイス”を直訳すると“静かな場所”となるのだけれども、95分間殆ど音の…

映画『タリーと私の秘密の時間』の私的な感想― 女の現実から目を背ける男へ―(ネタバレあり)

Tully/2018(アメリカ)/95分 / 女の現実から目を背けてきた男たちへ・・ /男はこの手の邦題をつけられると何だか無性にこっぱずかしくなってくる。 “タリーと私”までならなんとか・・ でも“秘密”というワードが添えられた瞬間から、その映画に甘い飽和…

映画『ア・ゴースト・ストーリー』の私的な感想―最期のメモに魅せられた男の魂―(ネタバレあり)

A Ghost Story/2017(アメリカ) / 魂の消滅 /2018年に観た映画の中では、間違いなくNo.1のお気に入りになった作品。 タイムラプス効果やCG処理等を一切行わず、霊魂の立場から見せる世界という発想で漂うような時の流れを見事に実現させたその表現技法…

映画『ノクターナル・アニマルズ』の私的な感想―捨てられた男の真意―(ネタバレあり)

Nocturnal Animals/2016(アメリカ) / 映像トリックに隠された真実 /ちょっと胸が苦しくなる映画です。 観た方の感想が真っ二つに分かれるこのミステリーは、デザイナー上がりのトム・フォードらしく作中の随所にアーティスティックな画が散りばめられて…

映画『モンスターズ/地球外生命体』の私的な感想―SF世界の舞台裏で彷徨う人間たち―

Monsters/2010(イギリス) /エイリアンの襲来後の世界を舞台にしたこの作品の根幹は完全なロードムービー。 ふたりの男女が汚染地帯と化したメキシコからアメリカの国境を越えるまでを描いていますが、邦題の地球外生命体は殆どはっきりと現れてきません。…

映画『レッド・スパロー』の私的な感想―最後の電話が物語る共産圏の女の実情―

Red Sparrow/2018(アメリカ) / ジェニファー・ローレンスの究極の俳優魂 ジェニファー・ローレンスってこんなに潔い芝居をする女優に成長してたんですね。 快活そうに見えてどこか幼気な雰囲気が魅力的だった彼女が、大人の女優として開花したその俳優魂…

映画『DISTANCE/ディスタンス』の私的な感想―オウムの闇を背負う者たち―

DISTANCE/2001(日本) /私的にはこの映画が一番是枝監督らしい作品な気がします。 ドキュメンタリー出身の彼が日本の社会問題に初めて疑問を抱いたのは、実は地下鉄サリン事件。 平成の犯罪史上類を見ないあの事件の事は未だに記憶に新しいですが、この映…

映画『ビューティフル・デイ』の私的な感想―ダークサイドを彷徨う男の絶望感―

You Were Never Really Here/2018(イギリス・フランス・アメリカ) /・・腹を据えて観ないとちょっとシンドイ映画かもしれません。。 90分という割り合い短い映画でしたが、どうも3時間くらいの体感速度を感じてしまうのは、劇中永遠に続きそうな孤独感。…

映画『カーゴ』の私的な感想―7分間のショートフィルムから生まれたヒューマンゾンビドラマ―

CARGO/2018(オーストラリア) /『ウォーキング・デッド』の世界では描けなかったゾンビアポカリプスな世界でのもう一つのヒューマンドラマです。 2013年、この映画の元となったオーストラリアで作られたショートフィルムは、Youtubeにアップされると同時…

映画『エル ELLE』の私的な感想―空っぽの女の美しさ―

Elle/2016(フランス、ベルギー、ドイツ) /ポール・バーホーベンの最高傑作である事は間違いない作品です。 『氷の微笑』 や『ショーガール』のようなもの凄く劣悪なエロティック映画を撮ってしまうわりには、『ロボコップ』や『トータル・リコール』等、…

映画『女神の見えざる手』の私的な感想―ロビイストの孤独と正義―

Miss Sloane/2016(アメリカ/フランス) /物語の最後で作品の印象が全く異なっていく珍しい映画です。 古典的なアメリカンサクセスストーリーと、叙情悲劇。 作品は終盤になるまでシニカルでウィットに富んだ会話劇の応酬なので、英語になれていない方は…

映画『花様年華』の私的な感想―圧倒的な色彩美―

花样年华(かようねんか)/2000(香港) /この映画はもう美しすぎるとしか言い様がありません。 古い時代の上海を連想させる建物、食堂に燻る紫煙の煙、梅林茂の情緒的な「夢二」のテーマソング、レトロでモダンなマギー・チャンのチャイナドレス。 そんな…

映画『スリーパーズ』の私的な感想―ベーコン指数も納得。名俳優達の夢の競演―

SLEEPERS/1996(アメリカ) / 豪華キャスト陣の夢の競演作品 この作品は興奮しました。 元々クライム映画は緊張感があり大好物ですが、この作品はまず何よりこの豪華俳優陣の夢の競演に、思わずうっとりしてしまいます。 アラフォー世代にとっては正によだ…

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