マリブのブログ

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―ジャニーズ森田剛の挑戦―映画『ヒメアノ~ル』の私的な感想



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ヒメアノ~ル/2016(日本)
監督:吉田 恵輔/原作:古谷 実
主演:森田 剛、濱田 岳/佐津川 愛美、ムロ ツヨシ

 ジャニーズ森田剛の挑戦

・・ちょっと今回は偏ったレビューかもしれませんが。。。

 

本作の原作を知らない方って、やっぱりそれなりに多いんでしょうか?

自分達アラフォー世代にとって、ギャグ漫画界のカリスマ的存在だった古谷実の作品が映像化に漕ぎつけられた時は、ちょっとした驚きでした。

「稲中卓球部」でお馴染みのシニカルな笑いを得意とする古谷ワールドは、その日常に紛れ込んでいるエロと、中二病的社会風刺のきいた笑いがとても心地よく、作者の移り変わる心情風景を同世代の立場で覗き見るような感覚でずっと傾倒してきました。

やがて当初のギャグセンスから少しづつ社会悪の実態を描き始め「ヒミズ」あたりからその本能的な人の心の闇を問い出した彼の正に真骨頂ともいえるダークな世界観を表現したのがこの作品。

古谷原作お馴染みの、コミカルでポップな主人公岡田くん達の恋愛劇の裏で、社会の歪の中徐々に倒錯してゆく境界性人格障害を持つもう一人の主人公”森田くん”。

そんな歪な彼の役を、まさかの同姓でジャニーズの森田剛が演じるとは・・

大手事務所のコンプライアンス的な問題も含め、彼がそれまでの華やかな経歴を全て捨て去り演じたこの作品は、私的にはジャニーズの新たな挑戦をちょっと垣間見た気がしました。 

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―――お人好しの童貞主人公”岡田くん”は、夢もないまま漠然と清掃会社で働く冴えないフリーター。
オタクで逞しい妄想癖を持つ”安藤さん”は仕事上でのパートナーだったが、彼はある日そんな安藤さんが喫茶店で働くウェイトレス”ユカちゃん”に恋心を寄せている事を打ち明けられる。
ストーカーの様に彼女に纏わりつく安藤さんに辟易しながらも、促されるまま彼の恋のキューピットを引き受けてしまう岡田くん。
しかし二人は安藤さんの仲介を通じてお互い惹かれ合ってしまい、やがてこっそり付き合い始めてしまう。
・・そんなふたりの恋の行方を、無気力な眼差しで見つめているもう一人の主人公”森田くん”
岡田くんの同級生だった彼が、安藤さんを上回る狂気のストーカーに変貌してゆくのに、そんなに時間はかからなかった・・

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 原作との違い、監督の想い

原作のサブカル系な古谷ワールドが好きなヒトにとっては、ちょっとした違和感を感じてしまうのがこの作品。

「ヒミズ」で人の世の不条理を描き、
「シガテラ」でその救いを求め、
「ヒメアノ~ル」で更にその先の絶望を描いた、古谷ワールドの究極的なノワール。

その圧倒的な空しさは、原作を読まれた方はご存知の通り、本当に救いがありません。

今回のこの原作の実写化は、ちょっと変わった2部構成でストーリーが展開していき、前半のポップなスタイルの恋愛模様の主人公は岡田くん、そして後半30分くらいに突如として入るタイトルバックからの主人公が森田くん。

二人の物語のトーンは同じ映画の中でも全くの別モノで、その中でも森田剛演じる森田くんの機械的な空気感は、アイドルとしての彼を全く連想させない程の虚無が広がっています。

やがてサイコキラーと化してゆく森田くんは、自分の存在意義の道連れにユカちゃんを殺そうと付け狙い続けますが、一方、岡田くんはそんな彼女を必死で守り抜こうとする過程で逞しく男として成長していきます。

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ちょっとココで原作の森田くんの最後の独り言を引用します。

・・中学の時の帰りにさ、オレは完全に”フツーじゃない”って・・気づいた日の事・・・すげえ悔しかったよ・・

・・・マジで、

もう本当に悔しくて・・その場で死にたくなった・・・
泣いちゃったよ・・

                           『ヒメアノ~ル』第六巻より


・・この彼の計り知れない異質な孤独感・・・

映画では感受性を欠いたそんな彼に、殺されそうになりながらも岡田くんが切なく寄り添う姿が描写されています。

しかし原作では、この同じ時間軸で生きている2人の接点は、最初の喫茶店のシーン以降、実は全くありません。

森田くんは公園のベンチで、何の救いもないまま警察に捕まってしまうという衝撃的なラスト・・

そんな絶望的な締めくくりに反して描かれたこの映画のラストシーンは、「ヒミズ」から引き継がれた古谷実の偏った世界観を知らない人達への監督の配慮と、近年にも起きた座間9遺体事件等にも見られるディスコミュニケーションの果てに実際に起きた悲劇への救いを見出した、せめてもの彼の優しさなんじゃないでしょうか?

近年増え続ける漫画原作の映画化において、どうしてもその著者への配慮と作品のイメージを重視するあまり、キャラクターが忠実でないと世間の批判を浴びる傾向が強いのですが、この作品のようにそんな既存概念を覆してまでも伝えたかった吉田監督の想いには一定の評価をしてあげてもいいような気がします。

この映画は、監督としてはまだ無名のはずの彼のチャレンジ精神と、踏襲してきた見せかけのアイドル路線のイメージを払拭してまで挑んだ森田剛2人の覚悟に思わず感心してしまったそんな作品です。 

 

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