マリブのブログ

ニ匹ののら猫と一緒に随時三匹の飼い主を募集中の元帰国子女。。オススメの映画やドラマの感想を徒然に紹介しています。

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映画『ウインド・リバー』の私的な感想―インディアン社会からの悲鳴―



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Wind River/2017(アメリカ)
監督・脚本:テイラー・シェリダン
出演:ジェレミー・レナー、エリザベス・オルセン、ギル・バーミンガム、ジョン・バーンサル

 静かに訴え続ける民族差別 

キャスリン・ビグローが『デトロイト』で暴いた黒人差別の実態を“動”とするならば、正にその対となるのがこの作品。

俳優から転身したテイラー・シェリダン監督らしく、彼の培ってきた知的で繊細な現場テクニックが随所に施されていてこの作品が初監督作品とは思えない程。

 

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雪原で死んだ少女の事件を淡々と追う展開は、脚本を務めたドゥニ・ヴィルヌーヴの『ボーダーライン』と一見同じクライムサスペンスのようで中身は別物。

自由と平等を謳うアメリカで今尚続くアメリカ先住民族インディアンの迫害と苦悩の歴史を随所に織り交ぜ、彼らの鬱屈した闇を“静”かに捉え続けています。

 

『ウォーキング・デッド』のシェーン役で人気を博したジョン・バーンサルの登場シーンは、随分少な過ぎた気もしますが・・

 

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―――ワイオミング州ウィンド・リバー保留地でハンターとして暮らすコリーは、雪原で少女の死体を発見する。
FBIの捜査官として現地に派遣されてきたジェーンは、過酷な環境の中、観察眼の鋭いコリーに捜査協力を求める。
やがて真相に迫る程に見えてくるインディアン保留地の闇。
少女は誰によって殺されたのか?・・それとも・・・

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 映画を観る前に

この手の作品を観る時に自分たち日本人は、アイヌや琉球民族の歴史を少し勉強しておいた方がいいのかもしれません。

インディアンと言われても、自分たちが想起するのは殆ど西部劇。

カウボーイハットの白人に追い立てられる悪役をイメージする方も、大分多いんじゃないでしょうか?

そんな歴史を知らない自分たちが偏見を持たぬ様、個々の民族を画一化して作られたのがこのネイティブアメリカンという相称。

 

でもここで考えてもらいたいのは、日本人ならどうでしょう?

アイヌや琉球民族にもそれぞれの文化や歴史は存在します。

彼らを安易にまとめてネイティブジャパニーズと称されたらどんな気持ちになるでしょうか?

 

この映画にはそんな移民国家の中で生き抜く先住民族たちの物悲しさがたっぷり詰め込まれています。

 

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 インディアン社会の現実

「数ある失踪者の統計にネイティブアメリカンの女性のデータは存在しない。実際の失踪者の人数は不明である」

というラストに出てくるテロップどおり、この作品が実際の事件をモチーフにして作られている事を監督は明言していますが、その詳細はいくら調べても見つかりません。

 

これこそが政治的な思惑の裏で、既に絶滅したかの様に認識されつつあるインディアンの実態

本州と四国を足したくらいの広大な自然を残すワイオミング州の半分の土地は国と州の管轄下ですが、その中で彼らは今でもひっそりと、そして健気に暮らしています。

しかしその保留地での犯罪は州法では裁けず、軽犯罪の規定のない連邦法でしか対応が出来ないという非人道的な環境下です。

 

つまり、、


この映画はミステリー調に描かれた、痛烈な社会批判を盛り込んだドラマです。

 

そんな彼らと本当の意味で同化して生活しているジェイミー・レナー演じるFWS(合衆国魚類野生生物局)のハンター・コリーと、エリザベス・オルセン演じるFBIの新人捜査官のジェーンとの対比は見事。

連邦法によって無法地帯と化した僻地の事件をプロトコルに乗っ取り捜査を進めていく外部の人間と、自然の摂理の中で法に縛られず人を裁いていく二人の描写を、対立構造ではなく上手く共生させて表現している事にも激しく好感が持てます。

更に映画の中で出てくる殺された娘の兄やその仲間達も、一見ただのギャングの様に見えてしまいますが、彼らにも深い事情があります。

 

19世紀に第7代大統領アンドリュー・ジャクソンによって、強制的に保留地へと追いやられた彼らは、支配民族による同化政策の中で歴史上既に存在しない者たちとして扱われ、そのアイデンティティーや先住民族としての生得権そのものが危ぶまれています。

そんなうらぶれた生活の中で卑屈に愚痴をこぼす兄の台詞に対し、

「世界と戦うか、その感情と戦うかだ」

と言い放つコリーの台詞は何とも印象的。

 

銃撃シーン前の回想が逆説的に始まるトコロも、ミステリーの作法をしっかりなぞった上でやけに新鮮に写ります。

劇中の随所に出てくる壮大で寒々しいバックの自然は、彼らの黙して語らない大らかな精神の象徴の様でもあり、その裏に取り残された苦しみをくっきりと浮かび上がらせていました。

 

舞台となったワイオミング州の愛称が平等の州 (Equality State)という矛盾にも、大分さみしさが込み上げます。

民族差別を扱ったもう一つの名作はコチラ

www.mariblog.jp

 

「ウインド・リバー」の上映スケジュールはコチラで確認できます。

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