マリブのブログ

ニ匹ののら猫と一緒に随時三匹の飼い主を募集中の元帰国子女。。オススメの映画やドラマの感想を徒然に紹介しています。

      
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映画『ミスティック・アイズ』の私的な感想―女の理想を打ち砕くインモラルな田舎街―

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WRECKERS/2014(イギリス)/85分
監督/脚本:D・R・フッド
出演:クレア・フォイ、ベネディクト・カンバーバッチ、ショーン・エヴァンス、ピーター・マクドナルド

 クレア・フォイの横顔

・・大味な邦題に惑わされなければ、この映画の主役はベネディクトより段違いの存在感を誇るクレア・フォイのはずだけど。。

作品をじっくり見ていくと、その彼女の表現力豊かな顔芸の多さには終始驚かされる。

 

Netflixオリジナルドラマの『ザ・クラウン』でゴールデングローブ賞を受賞してからはその頭角をめきめきと現し、最近では『蜘蛛の巣を払う女』や『ファースト・マン』等でも主役級の役を射止めている、正に今最も旬な女優。

 

私的にそんな彼女は、美形だがどこか垢抜けない印象が漂うのだけれど・・

 

この映画での彼女の役ドコロは、そんなイメージにピッタリの健康的な淑女。

派手さはないが、BBCドラマ『SHERLOCK(シャーロック)』からの知性的なキャラクターをそのまま引きずったベネディクト・カンバーバッチとの愛情たっぷりな田舎暮らしを彼女は実現させているが、やがて不意にやってくる彼の弟の存在により、何かが変わっていく。。

 

といっても、タイトルから醸し出すようなサスペンス色は極めて薄く、言ってしまえばこの物語で大した事件は起こらない。

 

・・彼女の理想的な家族像が、薄っすらと消えていく以外には・・・

 

そんな人の内心とのギャップを痛感していくクレア・フォイの横顔が、哀愁というよりも、どこか諦めにも似た悟りの境地に徐々に変化していく事に、かなりの恐怖心を感じてしまったのは自分だけなんだろうか?
 

 

 

あらすじ

デイヴィッド(ベネディクト・カンバーバッチ)とドーン(クレア・フォイ)の夫婦は、デイヴィッドが子ども時代を過 ごした村に引っ越してくる。
静かな田舎で子どもをつくって楽しい家庭を築こうとしていた。
そこへデイヴィッドの弟ニック (ショーン・エヴァンス)が突然あらわれる。 戦地から戻り、心を病んでいたニックの存在が徐々に夫婦の関係を壊していく ...。
ニックは夜中に徘徊したり、おかしな言動を繰り返す。
ドーンはこの兄弟の関係に不穏な違和感を感じ、最初こそ迷 惑と感じながらも、ニックの世話をしていたが、次第にニックの純粋さも感じていた。そんな 2 人を影から見つめるデイヴィ ッドの冷たく、恐怖すら感じさせる視線が有った。
兄弟はある時口論になり、ニックは夫婦の元を去ろうとし、ドーンは去ろ うとするニックを追う。
不意のニックの出現で知らずの内に、歯車は少しずつ狂っていく…。


Filmarksより抜粋

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 田舎町の実態と女の生き様

鑑賞後の余韻があまりにむず痒く、実のトコロ、ブログで紹介してみてもいい映画なのかどうか、かなり迷ってしまった。

苛烈な戦争体験の果てにPTSDを抱えた弟、かなり強い英国訛りの田舎町に渦巻く倫理観の欠如した実態等、それなりにメッセージ性の強い内容はてんこ盛りなのだが、それぞれを特化して描いた作品なんかと比べてしまうと、どうしてもその印象は薄い。

更に中盤くらいまでは、深すぎる兄弟愛に戸惑う妻の心象にもかなりリンクできたのだが、時が経てば経つほど、その彼女の内心と実際の行動とのギャップに追いつけなくなり、終いには置き去りにされてしまう。。

そんな自分の心に折り合いをつけてくれたのは、一緒に鑑賞した彼女の言葉だった。

「・・私みたいに人生を諦めてる人間からすればたいしたコトじゃないけど、女性に理想を持ち続けているオトコからすれば、だいぶ皮肉なのかもね・・・」

・・そんな台詞を吐かせてしまう自分もたいがいなもんだが、この言葉はやけに作品全体を占める倦怠感にしっくりとくる。。。

 

つまり、、

アラフォーにもなっても夢を見続けている自分には、クレア・フォイ演じる主人公の妻が、夫の歪んだ嘘やモラルの低い田舎町の有様に折り合いを着けていく様子は酷く残酷に映るのだが、現実をしっかり踏みしめ順応していく女性には、その言葉通り大したコトじゃないのかもしれない。。

 

原題の“WRECKERS”とは、その発音通りレッカー車、或いは解体業者の意味合いを持つ言葉なのだが、家庭に不協和音をもたらす弟を単体で表しているのではなく、その回りの人間達全てを総称し複数形で指している事が、この作品のポイントだろう。

 

徐々に訝しく見えてくる気の良い住民たちが、あからさまに自分等の振る舞いを否定しない事にもその奥行きが見えてくる。

 

物語の終盤では、妻は明るみになっていく夫の嘘により、促されたとはいえかなり困惑させられる決断を下すのだが・・

 

それが単純な夫への復讐心からではなく、彼女が自分の理想的な結婚生活を送る上での妥協なのだとしたら、妄執したまま古き良き明るい家族計画を信じ続ける自分にとっては、その強く逞しい本物の女の生き様に、もうひれ伏してしまう他になくなってしまう。。。

 

「ミスティック・アイズ」
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