13 Reasons Why Season1/2017~(アメリカ)
製作総指揮:セレーナ・ゴメス
出演:キャサリン・ラングフォード、ディラン・ミネット、クリスチャン・ナヴァッロ、ブランドン・フリン、マイルズ・ハイザー、アリーシャ・ボウ他
ティーンの苦悩とSNSの恐怖
LINEやTwitterで誰かの陰口を呟いた事はありませんか?
規制ばかりでいくら上辺を取り繕っても、万人の心に闇はあります。
親や教師から手を上げられた事もない世代の人達は、その痛みの何重倍にもなる言葉の暴力の意味さえわからず。。
そんなヒトが一度は目にしてもらいたい本当の青春の瑕がこのドラマには盛り沢山。
SNSで何気なく呟いた陰口から広がってゆく不安は、ゆっくりとその相手を追い詰めるのと同時に、呟いた側の心さえも徐々に蝕んでいくという・・
同僚から随分前に、、
「Netflixのオリジナルドラマは相当レベルが高いから一回観てみろ!」
なんて言われてはいたんですが、当時『ホームランド』や『ダメージ』をようやく見始めたばかりですっかり忘れてしまっていました。
初めは高校生の青春ドラマと聴いてアラフォー世代の自分がちゃんと理解できるのか不安でしたが、、
あまりにスバラシイ。。。
外国のハイスクールライフを多少経験していないと理解できない描写が含まれている事は否めませんが、それでもこのドラマの根底にある闇には、世代、人種を問わず、誰もが学生の頃に一度は体験したであろう居心地の悪さが積み重っていて見応え十分。
そして自殺してしまった少女から送られてきたカセットテープによって、一見仲の良い友人関係に見えていた登場人物たちのペルソナが解放されてゆく様には思わず絶句。
このドラマは安易なただの犯人捜しのミステリーではない苦悩する十代の儚さと、それを取り巻く大人たちの葛藤までを繊細に描いた社会派学園ドラマです。
- 13 Reasons Why Season1/2017~(アメリカ)製作総指揮:セレーナ・ゴメス出演:キャサリン・ラングフォード、ディラン・ミネット、クリスチャン・ナヴァッロ、ブランドン・フリン、マイルズ・ハイザー、アリーシャ・ボウ他
- ティーンの苦悩とSNSの恐怖
- 社会現象を起こした『13の理由』の理由
- 「ハンナ」を死に追いやった人物
- ①クレイ・ジェンセン(ディラン・ミネット)
- ②トニー・パディージャ(クリスチャン・ナヴァッロ)
- ③ジャスティン・フォーリー(ブランドン・フリン)
- ④アレックス・スタンダル(マイルズ・ハイザー)
- ⑤ジェシカ・デイヴィス(アリーシャ・ボウ)
- ⑥タイラー・ダウン(デヴィン・ドルイド)
- ⑦コートニー・クリムゾン(ミシェル・セリーン・アン)
- ⑧マーカス・コール(スティーヴン・シルヴァー)
- ⑨ザック・デンプシー(ロス・バトラー)
- ⑩ライアン・シェイヴァー(トミー・ドルフマン)
- ⑪シェリ・ホーランド(アジオナ・アレックス)
- ⑫ブライス・ウォーカー(ジャスティン・プレンティス)
- ⑬ケビン・ポーター(デレク・ルーク)
- ⑭ハンナ・ベイカー(キャサリン・ラングフォード)
- 『13の理由』を見る時に気を付けるべき7つのポイント
社会現象を起こした『13の理由』の理由
「主人公のハンナがなぜ自殺したのか?」
というセンセーショナルなテーマを描くこのドラマは、ティーンエイジャーのカリスマアイドルセレーナ・ゴメスが製作総指揮を務めた事でも有名になりましたが、彼女は原作のジェイ・アッシャーの同名小説『Thirteen Reasons Why 』と出会ってから実質6年以上もの歳月をかけてようやく映像化を実現させています。
彼女自身も80年代の名曲カバーソング「Only You」等2曲をこのドラマに提供しましたが、2017年3月にNetflixより世界同時配信されるとそのSNS上での反響は凄まじく、ツイート数は1週間で350万件を突破。(Fizziology調べ)
2018年に現在もその公式Twitterの総フォロワー数は伸び続け、5月時点では53万5千件を超えています。twitter.com
近年の日本でも問題になりつつあるネットリテラシーの崩壊の側面から、この作品自体の視聴制限や、作品の登場人物と同年代の子を持つ保護者達への注意喚起を促す社会現象も全米各地で起こっており、センシティブな子供たちが自殺という究極に美化された復讐劇に依拠しない様に懸念されているドラマでもありますが・・
セレーナ・ゴメス自身、過去に不安障害と鬱に苦しんで入院していた経験があり、その時に出会った自殺未遂をした子、心に深い瑕を負った子、自殺願望を持ち続けている子らを救い出す為にこの作品のドラマ化を切に熱望していた経緯もあり、単なる話題作り的なモノではなく、トラウマに抗う若者達の是非を真剣に討論し合えるような作風に仕上がっている様にも見受けられます。
「ハンナ」を死に追いやった人物
作品は一話毎にハンナが残した7本のカセットテープに録音された本人の肉声による友人達の紹介をしていくストーリー展開で、前13話を持って彼女が自らの命を絶つ事になった真相が明かされていきます。
ステレオタイプのキャラから意外な過去を持つキャラまで。。
ちょっと登場人物が多すぎて外人の高校生が判別しづらい自分達日本人の為に、その手引きとしてそれぞれの名前とネタバレナシの簡単な紹介をしておきます。
①クレイ・ジェンセン(ディラン・ミネット)
ハンナに恋心を寄せているドラマの視点人物。
ハンナの死後に送られてきた彼女のテープを聴いていくうちに、彼女との様々な思い出を回顧し苦悩し始めてゆく。
②トニー・パディージャ(クリスチャン・ナヴァッロ)
クレイの親友。
一見ワイルドに見えるが心根が優しく、ハンナのテープを聴くことに戸惑うクレイを陰ながら見守る。
③ジャスティン・フォーリー(ブランドン・フリン)
バスケ部でリバティ高校の人気者の一人。
元々はハンナの友人のキャットの恋人だったが、ハンナに好意を持つようになる。
④アレックス・スタンダル(マイルズ・ハイザー)
ハンナとジェシカの転校生仲間。
ちょっと偏屈な一面もあるがセンスは抜群。
父親は隠ぺい体質の警察官。
⑤ジェシカ・デイヴィス(アリーシャ・ボウ)
転校生仲間でハンナの元親友。
持ち前の可愛らしさでチアリーダーを始める様になり、ハンナとは次第に距離が離れてゆく。
⑥タイラー・ダウン(デヴィン・ドルイド)
学内の新聞部に籍を置く根暗な少年。
卒業アルバム制作の写真を一手に任されており、カメラを片手に様々な場所に現れる。
⑦コートニー・クリムゾン(ミシェル・セリーン・アン)
ハンナの同級生。
人望ある優等生キャラだが、人には秘密にしておきたい性癖を持っている。
同性愛者の家で養子として暮らしている。
⑧マーカス・コール(スティーヴン・シルヴァー)
リバティ高校の生徒会長。
優等生で卒業式で総代を務める予定だが、周りの生徒達を軽視している一面もある。
ジャスティンやザックと仲が良い。
⑨ザック・デンプシー(ロス・バトラー)
身長が高いバスケ部のスタープレイヤー。
少々マザコン気味の臆病な性格で、ブライスには意見出来ない。
ハンナに微かな恋心を抱く。
⑩ライアン・シェイヴァー(トミー・ドルフマン)
リバティ高校の新聞部部長。
詩集を好む温厚な同性愛者だが、自意識が強い一面も垣間見える。
⑪シェリ・ホーランド(アジオナ・アレックス)
生真面目で、ジェシカ達とは一線をおくチアリーダーの一人。
根が優しく終盤ではハンナに寄り添うが、高校生らしい優柔不断さも目立つ。
⑫ブライス・ウォーカー(ジャスティン・プレンティス)
アメフト部のキャプテン。
裕福な家庭に生まれ育つ典型的なジョックの一人。
ジャスティンとは古くからの親友で荒れた家庭環境の彼を日々気にかける。
⑬ケビン・ポーター(デレク・ルーク)
リバティ高校のスクールカウンセラー。
物腰柔らかい生徒たちの良き理解者を装うが、現実主義的で本当の意味で生徒たちを信用してはいない。
⑭ハンナ・ベイカー(キャサリン・ラングフォード)
自殺した主人公の少女。
どこにでもいる典型的な女子高生だったが、唯一の親友だったキャットが転校してしまった為に胸の内を打ち明けられる友達を作れずにいる。
『13の理由』を見る時に気を付けるべき7つのポイント
少女の自殺というデリケートなテーマを扱っている作品である為、このドラマを観る際にはちょっとした注意と心構えが必要な気がします。
更に同年代の視点ではとても追えない大人の方達に、自分が視聴において気にかけていた点を幾つか箇条書きにしておきます。
①十代の頃の自分の鬱を今一度想起する
年齢がいってしまうと中々共感を持てない若者たちの悩みですが、この作品の主軸はここに感情移入が出来ないと直ぐに興趣を削いでしまいます。
若い頃にいじめ等でつらい経験がある方にはちょっとしんどいドラマかもしれません。
しかしこの登場人物たちの些細な心の機微を感じ取る為にも、ちょっと振り返ってみて自分の若かりし日々の時の事を思い出してみて下さい。
逆に、十代の頃に悩みが全くなかったという方には理解出来ない作品でしょう。
②アメリカの高校生の話だと割り切る
上述したように、舞台がアメリカの高校なのでその生活を経験していないと理解できない描写も多々存在します。
簡単な事から言えば、車での通学、スクールカウンセラーの存在等はアメリカでは一般的な高校生活なのでそこは割り切って視聴してみて下さい。
③とりあえず4話くらいまでは我慢する
①と同じ理由ですが、初めはあまりに幼いキャラたちの日常生活に、年齢がいっている人ほど見ていてちょっとこっぱずかしくなってしまいます。
自分は4話くらいで恥ずかし過ぎて一度断念しようかとも思いましたが、中盤以降から事態が急展開していくので少し我慢してみて下さい。
④善悪で区別しない
登場人物たちは一見皆善人に見えますが、このドラマは只の善悪では区別できない若者たちの奥深い心の瑕がポイントです。
それぞれのキャラにとっては何気ない些細な過ちでも、当事者やそれをSNSを通じた第三者が悪意なく物見する事によって引き起こされる悲劇には胸が抉られます。
⑤誰も信用しない
ストーリーテラーであるハンナが残したカセットテープのメッセージ自体、果たして本当に真実を述べているのでしょうか?
このドラマはその事実を目で追う事より、それぞれの思いを追体験しながらなぞる事でようやく彼女の死の全貌が見えてくる作品です。
⑥ハンナの死の原因を追わない
ミステリーなようで、この作品の本当のテーマは彼女の死の真相だけではなく、社会問題的な側面を内包しています。
『ツイン・ピークス』のような驚きの要素は少ないのでハラハラドキドキ系を期待している人にはちょっと向かないドラマかもしれません。
⑦思い出したくない過去がある人は視聴を途中でやめる
①で述べたように、このドラマの基本は若者たちの悩みにどれだけ理解が及ぶかが鍵になっていきます。
ただし物語は同性愛、マリファナ、レイプ等、回を追うごとに犯罪性の高い問題に言及していくので、自身にトラウマがある方は視聴を一旦控える必要もあるドラマです。
2019年現在、このドラマはNetflixよりシーズン3迄が配信されていますが、まだシーズン1を見れていない人はこの機会に是非一度視聴してみて下さい。
シーズン1の感想はコチラ
学生時代に辛い経験がある人でも深い闇の中から見出す光を感じて少しは救われる気がするかも・・
『13の理由』はNetflixで観賞できます。