マリブのブログ

ニ匹ののら猫と一緒に随時三匹の飼い主を募集中の元帰国子女。。オススメの映画やドラマの感想を徒然に紹介しています。

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映画『ウィッチ』の私的な感想―魔女の誕生秘話を紐解くシュールな異色ホラー―

The Witch01

The Witch / The VVitch: A New-England Folktale/2016(アメリカ)/93分
監督/脚本:ロバート・エガース
主演:アニャ・テイラー=ジョイ/ラルフ・アイネソン、ケイト・ディッキー

 魔女の誕生秘話

“魔女狩り”と聴くと皆さんは何を思い浮かべるだろうか?

ジャンヌ・ダルクの最期?グリム童話の世界?

中世ヨーロッパでは実際に盛んに行われてきたこの異端審問は、偏見と差別の歴史の原点でもある。

 

近年で魔女と言えば、リバイバル版の『サスペリア』でも提示されたように、恐怖を感じる女のメタファーに過ぎない。

美魔女なんて謳われる女性達も、その美しさを永続的に保ち続ける方法に禁断の秘訣のような何か淫靡な香りを感じ取り、若い女子達は憧れを抱く。

けれど、そんな意識高い系女性の執念やプライド、或いは血の滲むような努力を垣間見てしまうと、大抵の女子達は尻込みしてしまうだろう。

やがてその憧れは嫉妬へ。。

自分じゃ到底手の届かない彼女達の現実に目を背ける様に、自然と距離を置くようになる方達も決して少なくないだろう。

 

つまり魔女とは、恐怖を感じる程、大きく標準から逸脱した人間の象徴なわけだ。

 

この映画は、そんな彼女達の歴史を少しづつ紐解いて見せていくと共に、恐れを抱く自分達の側から生み出す魔女の誕生秘話を、シュールな映像のみで直視させてくる近年ではちょっと珍しいタイプのホラー映画だ。
 

 

 

 

あらすじ
1630年、ニューイングランド。父ウィリアム(ラルフ・アイネソン)と母キャサリン(ケイト・ディッキー)は、5人の子供たちと共に敬虔なキリスト教生活をおくる為、森の近くの荒れ地にやって来た。
しかし、赤子のサムが何者かに連れ去られ、行方不明に。
連れ去ったのは森の魔女か、それとも狼か。悲しみに沈む家族だったが、父ウィリアムは、美しい愛娘トマシン(アニヤ・テイラー=ジョイ)が魔女ではないかと疑いはじめる。
疑心暗鬼となった家族は、やがて狂気の淵に陥っていく・・・。
Filmarksより引用

The Witch02

 清教徒の闇

物語の舞台は、新天地を求めイギリスより北米大陸に渡ってきた清教徒達が暮らすニューイングランドと呼ばれる開拓地。

清教徒とは
ピューリタン(英語: Puritan)は、イングランド国教会の改革を唱えたキリスト教のプロテスタント(カルヴァン派)の大きなグループ。市民革命の担い手となった。日本語では清教徒と訳される。

清潔、潔白などを表すPurityに由来する(Puritanで厳格な人、潔癖な人を指すこともある)。もともとはバカ正直などの意味で蔑称的に使われていたが、自らもピューリタンと称するようになった。
wikipediaより抜粋

 

ニューハンプシャーを始め、マサチューセッツ、ロードアイランド、コネティカットとどれも伝統と格式の高そうなイメージのこの北部4州も、17世紀まで遡ると、ネイティブアメリカン等先住民族との対立の歴史から始まる。

合衆国建国の父と呼ばれるジョージ・ワシントンは、彼らの集落を根こそぎ破壊する焦土作戦を展開し、民族浄化を謳い、彼らを徹底的に虐殺してきた。

 

当時手つかずのまま残されていた植民地の原生林は、そんな隣人を愛すべきキリスト教義と矛盾するインディアン差別に負い目を感じる彼らの闇の象徴でもある。

そこに今をときめくA24の映画祭に招待されるや否や絶賛を浴び、世界中のインディペンデンス映画を広く支援するサンダンス映画祭で監督賞を受賞したロバート・エガース監督は、CGやSE処理で一切誤魔化さず、圧倒的にその視覚に訴えかける恐怖を追求してくれた。

 

鬱蒼とした森を、微かな木漏れ日を交え横から捉える定点カット。

木立の陰影を残すライティングは、戸惑いに晒された人物の心象風景を更に奥深いものに際立たせる。

更にその森で生きる鹿や兎の不気味さといったら・・

無表情のまま何かを凝視している彼らを真正面からのアップで捉えているだけで、絶妙な塩梅の薄気味悪さを醸し出してくる。

 

登場人物も主演の少女を含めた7人だけに絞り、双子や黒山羊等、一見悪魔的にも見えるそれぞれのさり気ない演出もかなり上手い。

そこに純朴だが、思い込みの激しい傾向でもあるピューリタンの家族は、自分達の信じる戒律に照らし合わせた闇をトレースしてゆき・・

 

韓国版の『The Witch/魔女』のような派手さはないが、大袈裟な補完処理や特殊メイクをラストシーンまで一切行わず、自然の摂理や人の生理現象、或いは動物のとる異常行動等の中に、心の奥底に閉じ込めたはずの罪悪感を反映していく彼らは、やがて自らの贖罪の意識の中から本物の悪魔を生み出してしまう。。

 

主演を務めたアニャ・テイラー=ジョイはこの作品を期に、一気にハリウッドのスター女優の仲間入りを果たしたようだが、その若干19歳での名演ぶりの中で感じる少女の心の機微は、カルヴァン派の流れをくむ予定説の尊大さから大きく逸脱する自己犠牲の念に満ち溢れている。


そんな彼女がラストにようやく自分を解放した瞬間に待ち受ける超常現象は、宗教の柵から解き放たれ、スピリチュアルに暮らすネイティブアメリカン社会との融合のようにも感じられた。

 

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