マリブのブログ

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映画『 ラストキング・オブ・スコットランド』の私的な感想―ウガンダの独裁者、アミンの正体―

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The Last King of Scotland/2006(イギリス)/125分
監督:ケヴィン・マクドナルド
主演:フォレスト・ウィテカー/ジェームズ・マカヴォイ

 歪んでいくアフリカの憎悪

スコットランドの場所って皆さんは直ぐにイメージできますか?

サッカー好きな方はご存知でしょうが、フィヨルドに囲まれたイギリスの最北端にある小さな沿岸部の国です。

地図でいうとイギリスの上のあのギザギザのところ。

イングランドの建国の歴史に興味を持った時に手を出した映画がこの作品なんですが、、

実際は全然違いました。。

この映画の舞台はアフリカのウガンダという国の出来事で、実在したイディ・アミンという独裁者の半生をフィクションを交え、若い白人医師からの視点で描いています。

それまでアフリカの歴史なんてエジプトのピラミッドくらいしか知らなかった自分は、この作品を観て正に衝撃を受けました。

映画『クラッシュ』の感想でも書きましたが、ヒトのちょっとした不安から始まる負の連鎖がここまで国を変えてしまうなんて・・ 

 この作品はそんなヒトの心の闇に注目し、些細なきっかけから大量虐殺が起こるまでの人間の心理描写を描いた作品です。

そして劇中に出てくるスコットランド人の白人青年以外すべて実際に起きた出来事で、アミンが大統領だった政権下では述べ30万人以上の自国民が粛清されています。

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―――1971年、当時社会主義体制を敷いていたウガンダは、貧富の差からクーデターが勃発し、軍司令官だったアミンが政権を奪取する。
そんな中、医大を卒業したばかりで夢と希望に溢れたスコットランド人青年ニコラスは、父親への反発から国を出て、好奇心の赴くまま難民医療キャンプの医師としてウガンダを訪れる。
やがてふとしたきっかけでアミンと出逢ったニコラスは、彼に促されるまま主治医としての生活をスタートさせるが・・

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 純粋な狂気

フォレスト・ウィッテカーってこんなコワイ人でしたっけ・・?

自分の中ではもっと明るくて陽気な、或いはちょっと間が抜けているが優しい、日本人で言えば笑福亭鶴瓶のようなイメージがあったんですけど。。

劇中アミン演じる彼は、冒頭では気さくそのもの。

圧政に苦しんでいた国民からの人気は絶大的なものがあり、雄弁に彼らを熱狂させていく様子は誰の目にも救世主に写っています。

ジェームズ・マカヴォイ演じるニコラスを受け入れる際も、その笑顔は本当に無邪気で、優しさとおおらかさに満ち溢れています。

 

多分アミン本人も最初は純粋さが故に、国民に受け入れらえたのでしょう。

しかしその純粋さが故の不安から彼は変貌していきます・・

恐れから猜疑心へ、猜疑心から怒りへ、怒りから粛清へと転がり落ちる様に倒錯してゆくその様子を、実にテンポよくウィッテカー本来の優しさを引き出しながら表現しています。

そしてその激動の荒波に飲まれていくニコラスも・・

 

途中から気づく方もいると思いますが、どこか似ていませんか?この二人。

それは外見ではなく、例えば、純粋で、臆病で、虚栄心の強い雰囲気が。。

 

この作品のタイトル『ラストキング・オブ・スコットランド』の意味がよく分からず調べてみたら、ウガンダとスコットランドは歴史的な背景や独特な風習、伝統等、随分似ているトコロが多い様です。

同じイングランドという国に抑圧され、ウガンダは1962年に独立するも、建国時の未熟な社会主義体制の影響を引きずり内政は未だ迷走中、一方のスコットランドは独立は果たせていないものの、その機運は年々高まり続けています。

 

つまりはこの『ラストキング・オブ・スコットランド』とは、、

純粋な想いからの既存の環境、体制への反発をし抜け出そうとしている純粋な青年ニコラス、アミン二人共の事を指していて、結局は本当の意味での自立、独立が出来ずにいる二人をメタファ的に揶揄「ラストキング」と称している気がします。

ニコラスがアミンと決別し、アミンに言い放つ最後の台詞、

「あんたはまるで子供だ。だからかえってものすごく恐ろしくなるんだ」

とは正に、アミンに投影された自らの愚行に対しての言葉の様に感じます。

純粋さと愚かさは紙一重で、その歯車が狂った瞬間の恐怖をまざまざと見せつけてくれる切ない歴史映画でした。

 

『ラストキング・オブ・スコットランド』
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