マリブのブログ

ニ匹ののら猫と一緒に随時三匹の飼い主を募集中の元帰国子女。。オススメの映画やドラマの感想を徒然に紹介しています。

      
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映画『テイク・シェルター』の私的な感想―やってくる嵐に立ち向かう者―(ネタバレあり)

Take Shelter01

Take Shelter/2011(アメリカ)/121分
監督/脚本:ジェフ・ニコルズ
主演:マイケル・シャノン/ジェシカ・チャステイン

 嵐という比喩

嵐がやってくると、この映画の事をふと思い出す。

若干29歳にして映画監督デビューを果たしてから僅か4年後、こんなにも深い映画を撮ってしまったジェフ・ニコルズ監督には、尊敬の念しかない。

 

マン・オブ・スティール』のゾッド将軍でお馴染みのマイケル・シャノンの数少ない主演映画の一つでもあるこの作品は、問題作好きなトロント映画批評家協会を始め、世界中の8つの映画賞にもノミネートされた彼の代表作品。

その仏頂面で、相変わらずの神経質そうな演技は、『ノクターナル・アニマルズ』でアカデミー賞候補に挙がった刑事役の怪演を、遥かに凌駕する程に上手い。

そんな天才監督と技巧派俳優が人知れずタッグを組んだこの映画は、SFやディザスタームービーという有り体のジャンルでは治まりきらない。

 

・・今回は、思うトコロあって最初からネタバレをしてしまうと、、

 

タイトルからして、パニックムービーを彷彿とさせるこの映画は、実は“嵐”という比喩によって、具現化された人の深層世界を紐解くヒューマンドラマだ。

 

その解釈には、幾通りもの想像力を巡らせられるものの、幻覚や妄想等の精神疾患に苦しんでいる方の近親者には、是非一度手を出してもらいたい秀作。

 

その何気ない日常シーンの節々に、余りある程の優しさが、こっそりと潜められているので。。 

 

 

 

 

あらすじ

オハイオ州の工事現場で地盤の掘削作業を仕事としているカーティスは、妻のサマンサと難聴の障害を持つ娘と平凡で幸せな生活をしていたが、ある日、巨大な竜巻が街を襲う悪夢にうなされる。
悪夢は毎晩続き、竜巻と共に降る油のような赤い雨、そしてその雨に濡れて理性を失った人々に、自身や娘が襲われるリアルな内容に、 彼は次第に強迫観念に捕らわれ、家の庭に巨大なシェルターを作り始める。
彼の常軌を逸した行動に、家族や会社の仲間達は、次第に異常性を感じ始める。 カーティス自身も、重度の統合失調症を持つ母の症状が遺伝したのか??
悩み続けるが、 妻の理解を受けられず、 仕事を解雇されても、尚、シェルターを掘り続ける。
彼は狂気に走ってしまったのか?本当に巨大な竜巻が襲ってくるのか?Wikipediaより抜粋

Take Shelter02

 具現化する不安

ジェフ・ニコルズ監督が、この映画に二種類の不安を描いたと吐露している様に、劇中には圧迫感を際立たせる演出が極めて多い。

 

自分を捨てた統合失調症の母を気遣うカーティス。
その症状が自分にも遺伝する事を危惧するカーティス。

シェルターやガスマスクといった外部との遮断を暗喩する物質や、聴覚の不自由な娘という設定さえも、そんな物理的な不安を煽る為の演出に過ぎない。

そこに、感覚的に迫る不安要素としてやってくるのが、カーティスの見る悪夢

そのスリリングで、ホラー要素まで取り入れた巧みな描写は、見る側にもカーティスと同じ種の、一定の不安感を増幅させてくる。

 

しかし、彼の憂鬱の象徴でもある何時か来る“嵐”の存在は、終盤になって、彼が自ら怒りを爆発させるまで、その真偽が実は定かでない。

つまり、これが不安障害を抱える人間の心の症状と、そのままリンクする。

 

カーティスが夢の中で見る飴色の雨や狂暴化する市民の様子、或いは飼い犬に襲われるといった描写も、それが予知や白昼夢等ではなく、自分達が普段の生活の中で、つい妄想してしまう漠然とした恐れのひとつ。

 

そして実は、それに寄り添う妻の様子にこそ、この映画で伝えたかった監督の真のメッセージが込められている。

 

ラストシーンに至るまで、度々訪れてくるカーティスの悪夢によって、彼の穏やかな心は徐々に蝕まれていくが、夫が職を失い、ローンに塗れたシェルター建設を始め、更に自分自身の存在に怯えられても尚、妻は献身的にそれを支えようとする。

そして、本当にやってくる嵐の日の夜、家族はカーティスが用意したシェルターの中に非難するも・・

 

その現実ではあり得ない程、並外れた良妻賢母ぶりで注目を集めたジェシカ・チャステインは、後に『ゼロ・ダーク・サーティ』でアカデミー賞主演女優候補にもノミネートされる程の大物にのし上がっていくが、この作品に出演した頃の彼女のギャラは、日当100ドル程度という、エキストラと大差ないくらいの扱いだったと聴く。

そんな、女優を夢見る世界のあまりに儚い彼女の現実的な不安を、丸ごと包み込んだのが、きっとマイケルだったのだろう。

つまり、実際には全く逆の設定だった二人の名演が、戸惑いを覚えつつも、支え合う夫婦の様子を、見事にリアルに表現している。

 

ラストの砂浜で、実際に家族の目の前に広がる大雲は、そんなカーティスの心を蝕む不安の象徴。

それを、現実で一緒に見つめている彼女のシーンにこそ、精神を患っていく者としっかり向き合おうとする、人の強い決意と深い愛情が伺る。

 

映画の撮影が差し迫った頃、丁度1年目の新婚生活を迎え、破綻する結婚と破綻しない結婚との違いに疑問を感じていた監督は、この映画のプロットを全て使って、人の為に生きる事の意味を真剣に模索していたのかもしれない。

 

「テイク・シェルター」
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