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ミネルヴァの梟は迫り来る黄昏に飛び立つ

『ウォーキングデッド』シーズン9第3話の私的な感想―AとBを求める者の正体とは?―(ネタバレあり)

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The Walking Dead Season9 Episode3/2018~(アメリカ)
脚本:コーリー・リード
出演:アンドリュー・リンカーン、ノーマン・リーダス、ローレン・コーハン、メリッサ・マクブライド、シドニー・パーク、ダナイ・グリラ

 存続が危ぶまれる『ウォーキング・デッド』

俄然ストーリーが面白くなってきた反面、視聴率の低迷が深刻化し続けている『ウォーキング・デッド』

初回の視聴者数は全米で608万人、第二話の視聴者数でも495万人と、過去最低の視聴者数を記録したシーズン1の平均視聴者数600万人さえをも下回り、正に人気の低下に歯止めが効きません。

AMC側はニーガンの過去エピを主軸にしたスピンオフ企画の発表や、リークされてしまったアンドリュー・リンカーンの降板報道を必死になってフォローしたりと奮闘中ですが、やはり一度離れてしまったファンの心をとり戻すのは相当困難を極めている模様。

とは言え共にケーブルテレビ上では、アメリカの風物詩でもあるアメフト人気に押された恰好での視聴率の低下なので私的にはそこまで心配してないのですが、シーズン5では1580万人を記録した大人気ヒットドラマだっただけに、テレビ局側がこの醜態ぶりをどこまで許容できるのかが今後のシーズンを製作される上での重要な基準になっていきそうです。

長寿ドラマのマンネリ化とショッキングなシーンを打算的に盛り込んできた製作側の安易な判断が如実に結果に表れてきてしまっていますが、どんな結果になろうと自分はこのドラマの視聴を止める気は毛頭ありません

 

だって『ウォーキング・デッド』にはを見させてもらったから・・

 

昨今日本のテレビドラマも軒並み視聴率が低迷し続けていますが、このドラマの重厚で問題定義の強いファーストシーズンの初回エピソードをちょっと思い出してみてください。

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テディベアのぬいぐるみを拾い上げるという今ではちょっと考えられない設定で登場したこのウォーカーの少女が、当時未だ10歳にも満たないモデル出身の子役だったにも関わらず、パンチラ上等でリックに拳銃でアタマを打ち抜かれてアスファルトに叩きつけられるという衝撃的な役を体当たりで演じてくれたことにより、このドラマの長い道のりは始まりました。

 

あれから長い年月が経ち、一見同じようなグレンとエイブラハムの凄惨なラストシーンと比較してみても、今では受け手の印象が全く違う事にお気付きでしょうか?

 

問題を議論し合うのではなく闇雲に覆い隠す事で日本のテレビドラマ業界を衰退させてきた安易な視聴者や、過保護な道徳論を押し付けてくる放送番組審議会あたりなんかからは全方向で批判を浴びそうなこのシーンですが、あえてこの意味深な描写から始まった事で、作品が持つただならぬ厭世観とそこで葛藤を続ける人間達のドラマを深く追求する事に成功しています。

 

ヒトが持つ本来の狡さや卑しさは、決して消えません。

しかし自分たちは、その陰に潜む不安な心や僅かな優しさからも、同時に目をつぶってしまってはいないでしょうか?

 

初回の放送日間際に亡くなった、ハーシェル役・スコット・ウィルソンは天国からこの状況をどんな気持ちで見守ってくれているのでしょう?  

 シーズン9第2話の感想はコチラ


以下、
『ウォーキングデッド』シーズン9第3話のネタバレを含んだ上での感想です。

まだご覧になってない方はご注意下さい。



 

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 警告サイン

ウォーカーへと転化し、ゆっくり起き上がってくるジャスティン。

リックは収穫期の迫るアレキサンドリアを見回りながら、実ったトマトを片手に物思いに耽っている。

ベッドでそれぞれの共同体を繋ぐ憲章の草案をまとめているミショーン。
そんな彼女に感謝を述べながらも、リックは彼女の持つ鉛筆を優しく投げ捨てる。
机上の空論ではなく、彼は未来を作ろうとミショーンを抱きしめ、そのままベッドに誘う。

 

サンクチュアリに食料を届けようとしているマギーはカルと共に、道端で仲間を捜索していた救世主たちの集団に遭遇する。
ニーガンだった頃の様に少々高圧的な態度で、その積み荷を物色しだすジェッド
その様子に不安を感じるマギー達に対し、ローラが慌てて仲裁。
一色触発な空気の中立ち去ってゆく彼らを尻目に、マギーは馬車の歩を進める。

 

農園でジュディスと戯れているリックとミショーン。
彼らがかくれんぼをし、チャンバラをし、ジュディスに絵本を読み聞かせていると、そこへスコットがやってきて、疾走が相次ぐ救世主たちが誰かに暗殺されている可能性がある事を伝える。

 

橋の建設キャンプでは、救世主たちとの小競り合いが目立ち始める。
仲裁に入るアルデンを殴り飛ばすジェッド。
キャロルはふたりを止めようとするが、その右手は拳銃にかかっている。
ジャスティンの暗殺容疑を、アンに対しその鋭い目線を向けるレジーナ
やがてやってきたリックにより小競り合いは一旦は収束するが、アンの動向に不安を覚えるリックは、見張りをしていた夜に異常がなかったかガブリエルに問うが、彼は情事の後、アンが消えていた事実をリックに隠す。

ウォーカー化したジャスティンの首元に矢じりで射抜いた痕跡を見抜いていたリックは、不信感を丸出しのままのダリルに仕方なく尋問を始める。

救世主たちへの遺恨を残しつつも、ジャスティンの暗殺を真っ向から否定するダリル。
ウォーカーの蔓延る世界でいがみ合いを続ける彼らを、リックは諭すようにダリルに伝えるが、その表情から困惑の色は消えない。

やがて立ち去ろうとするダリルにリックは告げる。

『兄貴を屋上に残した男を許した自分を思い出してくれ』

と・・

 

橋の警備の為、森に集まるウォーカーを監視して回るマギーたち。

彼女はシンディーと組んで壊れた小屋の屋根の音に誘われているウォーカーを撃退しようとするが、中に閉じ込めていた無数のウォーカーに襲われてしまう。
その間一髪のトコロでリック、ダリル、ロジータ達が助太刀に入り、彼女は救い出されるが・・

シンディーの引率の元、道端で倒れこんでいるオーシャンサイド出身のベアトリスを見つけるリック達。
彼女は巡回中に、アラットに襲われた事をリック達に何気なく示唆する。。

元救世主たちの不穏な動きに戸惑いを見せ始めるキャロル。
彼女はリックにその不安な胸の内を吐露するが、リックは救世主たちに限らず、これまでの犠牲者への弔いの意を込めて、全ての生存者の命の尊さをキャロルに諭す。

 

救世主たちへの憎しみを抑えながらも、生まれてきた我が子の為、希望のある未来を築こうとするリックの姿勢に同意している事をダリルに告げるマギー。
ふたりは森の中でウォーカーに出くわすが、その脇で殺されていた救世主の死体には、見覚えのある痕跡が・・

ゴミ山に戻ってきていたアンはその不用品の中から小箱を取り出している。
彼女は徐にその中からシーバーを取り出すと、誰かに交信を試み始める。
救世主たちの失踪事件の真犯人をアンは彼らに問うが、その男の声はそれを否定した上で、

「収穫はないが取引は実行する。明日だ。」

と不気味に答える。

やがて闇夜から現れるガブリエル。。
彼はアンの為にリックに事実を隠していた事を告げるが、彼女はそれまでシーバーの相手と人々を取引材料にしてきた事を認めた上で、ガブリエルの手を取り自分と一緒にリック達の元から離れようと提案する。
困惑するガブリエルだが、彼はリックに真実を隠せない事をアンに告げると、そのまま無造作に彼女によって気絶させられてしまう。。

 

森の中を歩き回るキャロル達は、やがてジェッド達に遭遇。
彼はキャロルの首元にナイフを突きつけリックから銃を奪おうとするが、逆に返り討ちにあい、キャロルに胸を刺される。
自分に止めを刺す様促すジェッドにキャロルは、リックの意思に従い、

「全ての命は尊いので、貴方も殺さない」

と告げる。

 

オーシャンサイドに移住する以前、シンディーたちが暮らしていた建物の前でアラットが跪いている。
その背後で銃を構えているシンディー
オーシャンサイドの面々もアラットに並々ならぬ憎しみの表情を浮かべている。
やがて彼らの意思を察したダリルとマギーがシンディーたちの元へとやってくる。

アラットはマギーに必死に命乞いをするが、グレゴリーに制裁を下したマギーの判断に勇気づけられた事を告げるシンディーたちの胸中を察し、彼女はその報復を止められない。

サイモンの指揮の元、幼い弟も含めた家族を全て虐殺されていたシンディーは、踵を返し立ち去っていくマギーとダリルの背後で、泣き叫ぶアラットを処刑する。。

 

キャンプ場から立ち去っていく救世主たち。
彼らの足元には、冒頭でリックが収穫したトマトが無残に潰れている。

オーシャンサイドの人々が抱く救世主たちへの積年の恨みを知ったマギーは、その信念に従い、いよいよニーガンの元へ向かう決心を決める。

自分の情動により目の前で彼にグレンを撲殺されていたダリルは、そんな彼女に付き従い、ふたりはアレキサンドリアへと歩き出していく・・・
 
 

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 ・・不安から恐怖へ、恐怖から疑いへ。
疑いから過去の因果によって憎しみに立ち戻っていってしまうメインキャラのそれぞれの様子が、刻銘に描かれています。

積年の恨みからくる彼らの衝突と、それに対比するかの様に未来に希望を持とうとするリックとの様子からは何とも言えない詩情が溢れてきますが、彼らの回りを取り囲むモブキャラ達の描写にも手を抜いてはいません。

アルデンを筆頭に、リック側の信念に近づき始めたローラ。
過去の因果の報いを受けるジェッドとアラット。
更にはその狭間で揺れているレジーナの様子等、端的ですがそれぞれの元救世主たちの心情の変化が上手く織り交ぜられています。

感情移入しやすい視点人物たちだけでなく、この群集心理を投影させた脇役の存在にスポットを当て始めた演出には大いに好感が持てます。

そして今回初めて明かされたオーシャンサイドと救世主たちの過去は、人間をリソースとして扱ってきたニーガンの信念からも若干ズレているので、少々とってつけたエピソードにも感じられましたが、無邪気な悪意の象徴のようなサイモンの笑顔を久しぶりに想いださせてくれたので良しとしますw

 

前回大怪我をしたはずのアーロンのその後が全く描かれなかったので、ファンの間でウワサされている無謀にもリックの後の主役をアーロンにする説が少々アタマを掠めてはきますが・・

 

そしてミステリー色を強めてきた今回のエピソードでやっぱり一番の驚きは、

ヘリのグループの存在
ですね。。

アンの描写から察するに、彼女はどうも随分前から彼らと交流があった事が明示されましたが、その不気味なシーバー越しの声色も含めて、彼らはジョージー率いるコモンウェルスとは別の組織の可能性が示唆されてきました。

ようやく甘いエピソードが持てたガブリエルにはちょっと可哀想ですが、つまりアンは以前からこの組織の手先だったと観るのがやっぱり妥当でしょう。

リーク情報にも流れていた、

「AかBか?」

という謎の選択をアンに問う彼らのこの言葉の真意は、今回のエピソードでガブリエルに告げられた、

「あなたはてっきりBかと思っていたわ」

という彼女の台詞と、シーズン8の6話でリックがジェイディス達に閉じ込められたコンテナにAと書かれてていた事により、

A=信念を持つ者(強い者)

B=裏切る者(弱い者)

という解釈に自分には聴こえてきます。

この何とも言えない壮大なスケールの思想的なマンパワーを探し求める彼らの背景には、コモンウェルスに匹敵する程の巨大な労働力を持ち合わせるグループの存在を感じさせてきます。

・・これが暗に共産主義体制下で崩壊した某大国の理想論を皮肉るような真似だけはしないでもらいたいですが・・

ウォーキング・デッドの映画化を踏まえて、新たにAとBを求めるグループの謎を考察してみました
www.mariblog.jp

 
個人の尊厳よりも芸術文化を尊重するかの国の文化に、美術教師だったアンが傾倒している様に見えてしまっているだけに・・・

 

冒頭の農園でジュディスと戯れているリックの様子からは、まるでそこで最期を迎える初代『ゴッドファーザー』ことマーロン・ブランド演じるドンのラストを彷彿させてくるかのようなオマージュを感じてしまい、相変わらず寂しさが薄っすらと込み上げてきてしまいました。

シーズン9第4話の感想はコチラ

www.mariblog.jp

 

『ウォーキング・デッド』シーズン9は、
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