THE PHILOSOPHERS/AFTER THE DARK/2013(アメリカ/インドネシア)/107分
監督: ジョン・ハドルズ
出演:ソフィー・ロウ、ジェームズ・ダーシー、リース・ウェイクフィールド、ダリル・サバラ
奇妙な邦題。何故か引き込まれるソフィー・ロウの魅力
綿菓子を掴むような、どこかふんわり朦朧としてしまう映画でした。
SF映画のつもりで見ると、きっと苛立ちが募ってしまうでしょう。
インドネシアの大学生達を舞台にしたこの作品は、『ウォーキングデッド』等と同じアポカリプスをテーマにしているんですが、この映画がちょっと稀有なトコロはストーリーが全て彼らの空想世界の中で起こる出来事だというコト。
つまり、
現実には何も起こっていないというのがポイントで、この事を念頭に置いてから見ないとこの映画はちょっとシンドくなります。
きっと、この邦題にムリがあるんじゃないでしょうか?
原題の『THE PHILOSOPHERS』とは”哲学者たち”という意味で、『ラストワールド』なんていう通俗的なSF映画チックなタイトルによって、この映画の持つ本当の意味がちょっとぼやけてしまっています。
多分この作品は、、
哲学的な概念のマインドゲームをテーマにした、一種のスリラー映画です。
なので、
あえてSF映画風に原題を変えてきた配給会社の意図がイマイチよく分かりません。
なんてもやもやを抱えつつ映画を見ていると、その学生の中の一人、ソフィー・ロウの何とも言えない透明感についつい引き込まれてしまうちょっと不思議な感覚。。
馬面で演技もベタベタなんですが、妙な存在感のある主演女優、ソフィー・ロウ。
―――卒業を間近に控えた、ジャカルタのインターナショナルスクール。
ソフィー・ロウ演じるペトラ達学生は、哲学の授業の最終課題として教授から奇妙な課題を突き付けられる。
それは「終末世界において、人は何を基準にすれば生き残れるか?」というモノ。
戸惑いを隠し切れずにいる学生たち。
それでも彼らは教授から与えられた様々な空想世界の中での職業、特徴、関係性などを用いて議論を重ねていく。
しかしその答えは見つからず、彼らは如何なる選択肢をとっても結局は必ず滅亡してしまう。
やがて優等生のペトラは、その課題の裏に隠された教授の真の目的を理解してしまうが・・
哲学的思考を用いたマインドゲーム
ややこしいので自分の為にもちょっとこの映画の整理をしておくと、
①SF映画に見立てた、哲学の授業中に起こる一種のシチュエーションスリラー
②アポカリプスはあくまでも空想世界の話で学生達には実際に何も起きていない
③哲学的思考を題材にしているが、実は教授と学生たちの関係性が定かではない
といったところでしょうか?
そんな中で学生たちに突き付けられる究極の「生き残る為の選択肢」とは?
・・なんて、
ますますアタマが混乱してきてしまいます。
だってどんな選択肢を持ってしても、それは現実には単位を与える側の教授のさじ加減一つなワケで・・
・・しかしそれがこの映画に隠されたちょっとした叙述トリックです。
劇中、学生たちは人類存続の答えを模索する為、教授から与えられるその職業による優位性や、感情の抑止による合理的価値観の見解等でみるみる翻弄されていきます。
でもこれは教授によるただの「問い方のマジック」。
人は幾つかの問いを尋ねられると、そのどれかに答えがあると錯覚してしまいます。
そして如何なる選択肢を用いても解決しない事変が起きると、その問いを問いかけてきた人物に答えがあると錯覚してしまう一種のマインドコントロール。
この作品に登場する教授は、そんな哲学的思考を用いてある一人の生徒に対し、自分の論理の正当性を頑ななまでに主張し続けていきます。
これに気づくと、その自分の定義の矛盾に苦悩している教授がちょっとおかしく感じられるかも。。
言わば、自称ロジカルモンスターの抑えられない感情の切なさ。
ペトラはそれに気づいた時、この教授のマインドゲームを自らの主観に置き換えて思考していきます。
そして、その彼女の哲学的な価値観で描かれる世紀末の爽快感といったら・・
そういった意味で、冒頭から全面に押し出される絶妙な空気感を醸し出すソフィー・ロウの魅力的な描写に、自分もまんまと騙されてしまったちょっと悔しい作品でした。
『ラストワールド』は
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