Monsters/2010(イギリス)/94分
監督/脚本/撮影/VFX:ギャレス・エドワーズ
主演:スクート・マクネイリー/ホイットニー・エイブル
終末世界で彷徨う人々のロードムービー
SF映画を期待して見た方には、ちょっと味気ない映画なのかもしれません。。
エイリアンの襲来後の世界を舞台にしたこの作品の根幹は完全なロードムービー。
ふたりの男女が汚染地帯と化したメキシコからアメリカの国境を越えるまでを描いていますが、邦題の地球外生命体は殆どはっきりと現れてきません。
それでいて、美術、装飾、ロケセット、CG合成などの随所にこだわりを見せ、見えないエイリアンの影に怯える人間たちの情動のみに焦点を絞った怪作。
この作品で長編映画デビューを果たしたギャレス・エドワーズは、監督、撮影、脚本、VFXのすべてを一人でやってのけ、同行したクルーは彼と二人の役者を入れても7人のみ。
撮影はテキサス州をはじめ、メキシコ、グアテマラ、コスタリカで3週間で撮影され、総予算は5千万円前後とSF映画にしてはあり得ない低予算で撮られていますが、監督の並々ならぬ執念とセンスが随所に光ります。
とは言えあまりにエイリアンが出てこない点と、近未来をテーマにした作品にしては大分叙情的な作風が原因で、多くのSF愛好家たちからは大分非難を喰らったようですが私的には、
結構好きなテイストです。
それは、作品全体から漂う厭世観とシュールさ。
登場する役者も主演の二人のみなので、彼らを取り巻く人間たちはすべて現地調達のエキストラだったようで、その生々しい会話の節々にメキシコの暗部が見え隠れしています。
このロケを中南米に絞って敢行した事により、麻薬カルテルが蔓延るメキシコとのボーダー沿いに漂う荒廃した現実世界がこの世界の終末思想に絶妙にリンク。
CGを操れるVFX技師上がりの監督だからこそ低予算でも撮影できた作品である事に間違いはありませんが、いい意味で、SF映画の見識を大きく裏切られます。
―――地球外生命体のサンプルを採取したNASAの探査機が、大気圏突入時にメキシコ上空で大破してから6年後。
メキシコでスクープを狙うカメラマンのアンドリューは、上司から現地でケガをした社長令嬢サマンサを国境まで送り届ける命令を受ける。
アメリカとメキシコのボーダーラインは謎の生命体の繁殖によって封鎖されており、二人は強欲な現地の人々をいなしながらアメリカ行きの最終フェリーに乗り込もうとするが・・
エイリアンの襲来に準えた社会風刺
冒頭でSF風のロードムービーと定義付けましたが、それでも所々に細かい視覚効果が施されているのはやはり監督の手腕。
木に繁殖するエイリアンの種子や暗視スコープに写るその異世界の生物の形相は、『宇宙戦争』や『インディペンデンス・デイ』のような好戦的なエイリアンには見えず、彼らが闇夜に響かせるその鳴き声にはうっすら愛着さえ湧いてきます。
監督は元々POVな技法で撮影をするつもりだったようですが、スタビライザーを使った手持ちハンディカムに切り替えた事により、そのカメラワークも中々に秀逸。
VFX上がりの技師が撮影したとは思えないほど陰影の付け方も印象的で、朝日や逆光の撮り方、スカイラインを織り交ぜた描写は何ともいえない情緒感。
男女の設定を現実を直視するカメラマンと現実を知らない裕福な女性にした事にも、ふたりの逃避行に味わい深いドラマ性を与えています。
近年のSF映画業界では予算があればあるほど特殊造形やCGに比重が傾きがちですが、この監督自らがあくまでもVFXを映像の補完材料として捉えている様で、焦点を当てているのは常に人物の移り変わっていく心。
苦楽を共にすることによって変化していく男女の関係性、現実を直視する事で見えてくる女の新たな視点、そして最終的には見えない異生物を生み出し自らの手で駆逐していく事象を、欺瞞に満ちたアメリカの諸外国への不遜な対応の仕方にも準え言及しているあたりに、監督の内に秘めた社会風刺も薄っすら感じさせられます。
ちなみに主演を張った二人の俳優は、この作品をきっかけに撮影後めでたく結ばれたようで。。
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