La nuit a dévoré le monde/2018(フランス)/93分
監督・脚本:ドミニク・ロッシャー 、ドミニク・ローシェ
主演: アンデルシュ・ダニエルセン・リー /ゴルシフテ・ファラハニ 、ドニ・ラヴァン 、シグリッド・ブアジズ
シュールなゾンビパンデミック
フランスらしい独特なシュールさが漂うゾンビ映画だ。
『ウォーキング・デッド』の再開を待ちきれなくて思わず借りてみたホラーだが、ただ襲ってくるだけじゃなくて、無言のままもがいているだけのゾンビからはなんともいえない哀愁が漂ってくる。
冒頭は『 28日後...』等のゾンビパンデミックでお馴染みの「ある朝、目覚めたら・・」なシチュエーションから始まるが、その悲壮感は殆どといっていい程感じられない。
元々主人公が人間が苦手という設定からなのか、ちょっとライアン・ゴズリング似の主人公・サムは、生と死の境を謳歌するかのようにそんな異世界を彷徨い続ける。
終いには身の回りのモノを集めてパーカッション演奏してみたり、部屋中をジョギングしてみたりと終始マイペースな彼に思わずツッコミを入れてしまいそうになるが、クラシックなアコーディオン式のエレベーターに取り残されたゾンビと会話をし始めた頃にようやくその奇妙な空間の意味合いに気付く。
彼が戦っているのはゾンビからの恐怖ではなく、孤独なのだという事を。。
―――元カノから自分の私物を取り戻す為、彼女が主催するパーティーへとやってきたサムは、その喧騒に疲れ、思わず奥の部屋で眠ってしまう。
翌朝目覚めると階下の部屋は血の海。。
生存者を探そうとする彼は、そこで変わり果てた姿の元カノにまで襲われそうになる。
気分を一新、とりあえずの食料と水を確保し始めるサムは、ある晩逃げ込んできたサラの出現によってとある決心をする。
ゾンビを凌駕する恐怖
『夜が世界を飲み込む』なんてオシャレな原題を『リビング・デッド・サバイバー』なんて陳腐な邦題に書き換えられてしまったおかげで大分視聴対象者がズレてしまった気がするが、この映画の一番の醍醐味はこれまでのゾンビ映画には全くなかった新しい発想。
冒頭にも軽く触れたが、この作品のゾンビは全くわめかないのだ。
以前から死人が声帯を震わす事にちょっとした疑問を抱いていた自分にとっては、それだけでも監督に妙な親近感が湧いてくる。
その演出は物理的なゾンビサバイバルでの生き残り方ではなく、終末期のヒトの本能的な情動を突き動かし、更にその無音の世界の中でのシチュエーションスリラー的要素が、孤独に追い詰めらていくサムの心象風景をより鮮明に浮かび上がらせてくる。
アルフレッドと名付けたゾンビとの会話や、静寂に包まれつつある街にドラムを叩きならしてゾンビを呼び戻す描写は、一見滑稽に見えるかもしれないが、自分には妙にリアルを感じてしまう。
それはきっと劇中のサム同様、孤独の本当の恐ろしさを知ってしまっているからなのだろうか?
誰にも思いが伝わらないという事は、映画屋にとっても死に値する。
そんな現実社会に準えた終末世界で自分の殻に閉じこもろうとしていたサムに、本当の安住の地を探す旅へと促してくるサラの存在は、自分にはどうしても天使に見えてきてしまう。
例えそれが、作品同様、幻想だったとしても・・
つまりちょっと哲学的だが、この映画で描かれているのはゾンビとの戦いではなく、臆病な自分との戦い。
死屍累々のゾンビサバイバルを期待した方にはきっと肩透かしを食らってしまう作品かもしれないが、明日配信がスタートする『ウォーキング・デッド』でも、そんな安定を築く社会と高みを目指し彷徨う社会との対比が描かれていきそうだが、この映画のラストに広がる無数の家屋の屋根には、危険を冒してでもまだ見ぬ誰かを探そうとするヒトの純粋な希望がしっかり感じられた。
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