マリブのブログ

ミネルヴァの梟は迫り来る黄昏に飛び立つ

映画『レオン』の私的な感想―極限の偏愛で繋がる男の儚い夢―

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Léon/1994(フランス)/133分
監督・脚本:リュック・ベッソン
出演:ジャン・レノ、ナタリー・ポートマン、ゲイリー・オールドマン

 不器用な愛情表現の示し方

自分は昔からあまり恋愛映画を観れない。

きっとそれは、そこに真実の愛のカタチをみつける事が出来なかったから。。

 

それじゃ、真実の愛ってなんなんだろう?

 

不器用な自分には決して口にする事の出来ない甘い言葉を囁かない物語なのか?

それとも女の幸せを只管願い続ける献身的な思いこそが本当の愛情なのか?

答えはまだ見つからないけど、それでもふとしたきっかけに誰かを強く意識するようになるコトは未だにある。

それはオジサンになった自分には恋と呼べるほど大袈裟なものではないが、せめて相手の為に何かをしてあげたい情動についかられてしまう。

 

そんな時に必ず見返して見たくなるのがこの作品。

 

リュック・ベッソンほどロリコンにはなれないが、この作品で俳優デビューを果たしたナタリー・ポートマンの愛くるしさは異常だ。

荒んだ家庭環境、愛情を受けられなかった父親との確執、無垢な弟が示した温もりに固執し続ける少女の感情等、全ての不幸な要素が揃った中で、彼女はどうしてあそこまでレオンに愛を捧げられるのか?

誰かの映画の台詞にもあったが、

「・・虐げられて育った子は、あんなに人に優しくなれないはずなんだよね・・」

なんてコトバがアタマの中に木霊する。

 

この映画はきっとそんな女性脳の傾向が強い自分にとっては、恋愛のバイブルのような役割を果たしてくれる作品なんだろう。

 

年齢も環境も感性も違う相手に、ヒトはなぜそこに愛を感じることができるのか?

 

そんなもどかしくも普遍的なヒトの愛情表現の表し方を、この映画は色褪せず何時までも自分たちに示し続けてくれる。

 

 

 

―――ニューヨークの一角。
イタリア系の移民としてダウンタウンで暮らすレオンは、孤独と鉢植えだけを愛するプロの殺し屋。
彼の流儀には一切の隙が無く、若い頃から世話を焼いてくれたトニーの元で淡々と仕事をこなし続けている。
しかしそんなある日、同じアパートに住む少女・マチルダが、麻薬捜査官のスタンスフィールドによって家族を全て惨殺されたことにより事態は変化してゆく。
彼女を見捨てる事が出来なかったレオンは、行き場のない彼女との共同生活を始めるが、マチルダは次第に倒錯した恋心を彼に感じていく・・

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 3人の名演 (※以下、ネタバレあり)

エンディングに流れるstingの「Shape of My Heart 」の切ないメロディーは、この映画の公開から20年以上が過ぎ去った今でもしっかり耳にこびり付いはいるが、それ以外にはあまりに強烈なインパクトを残してくれた3人の俳優以外記憶に残らない。

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無骨な殺し屋を演じたジャン・レノには、その儚くも幼気な純真さに世の大半の女性は愛おしさを感じるだろう。

彼の生き様は、正に温もりを感じられない現代の中でも直向きに生き続けようとしている男を投影させた存在。

そんな彼のたった一つの希望は、窓辺に飾られる観葉植物の鉢植えに全て託されていて、光を浴びることができなくなってしまった彼の侘しさを有り余るほどに伝え続けている。

 

そして彼をいつの間にか男として愛し始めるマチルダは、言ってしまえば、極限状態の中で辿り着いてしまった究極の偏愛だ。

それでも彼女がいじらしくも愛おしく感じてしまうのは、ナタリーの子役とは思えない妖艶な魅力と名演技のおかげもあるが、私的には彼女がレオンに甘え続けなかったからのような気がしてくる。

家族を皆殺しにされ、正に吊り橋効果の様な状況でレオンに救いを求めた事から始まった彼女の切ない恋心は、そのスタートがどうであれ、彼から千荊万棘の世でも逞しく生き抜く事の辛辣さを学んでいく事へと次第に転化していく。

社会的地位のない男は、ココに儚い自分の夢を託し、彼女の虜になる。

 

そして忘れられないのは、やっぱりゲーリー・オールドマンの怪演。

DA(麻薬取締官)でありながら麻薬密売組織を裏で牛耳っているスタンスフィールドの倒錯ぶりは、言葉では語りつくせない程の狂気。

彼の瞳は真っ直ぐに死んでいて、その奥にある闇には同僚の刑事でさえ迂闊に近づけない。

 

でも思い返してみるとレオンはどうだっただろう?

 

殺し屋家業を抜け出せずに日向が眩し過ぎる彼は、愛用のサングラスでその瞳を隠し続けている。

その眼鏡の奥をこじ開けてくれたのがマチルダだった。

 

つまりこのラブストーリーは三者三様に倒錯していた彼らが、闇に囚われ続けながらも如何にして太陽を浴びる事が出来るかにかかっている。
 

 

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 リュック・ベッソンの才能

あまりにも切ない恋愛模様をこの映画で描ききってしまったリュック・ベッソンは、ヌーヴェル・ヴァーグ以降のフランス映画業界内では「新しい波」をもたらした巨匠とされているが、彼のその才能のすべてはこの作品で使い果たしてしまっているだろう。

97年に発表された『フィフス・エレメント』でその才能を開花させたミラ・ジョボビッチとの結婚生活も長くは続かなかったが、それでも彼が大多数の映画ファンの間で今も愛され続けている所以はなぜなのか?

 

速足で歩くレオンに必死に追いつこうとして歩くマチルダ。

その風貌に近づく為に、お揃いのキャップとサングラスを用意してくるマチルダ。

そして極めつけは、レオンが死んでしまった後に、彼の鉢植えを寄宿学校の庭先に植えるマチルダのラストシーン

それまでのレオンの根無し草の人生を彼女が象徴的に救い出すこのシーンは、大多数の自信を持てない人間にとっては、一時でも清涼感を感じる事の出来た名シーンだろう。

・・それはまるで、うらぶれた生活を送ってきた男がその思いを彼女に昇華させてもらうかの様に・・・

 

リュック・ベッソンの恐ろしくピュアな偏愛ぶりは、ここが上手い。

託す思い、託された思い、この二つのまぐわう感情を映像美の中で消化させていく技術は他に類を見ないが、その上で彼の公私においての愛情表現は、その愛する者が如何に飛躍するかという事だけに全精力が注がれている。

 

彼は作中のレオン同様、報われる愛ではなく、繋がれていく愛だけを今も見続けているのだろうか?

 

冒頭の彼らが住むアパートで、

「大人になっても人生はつらい?」

なんて心を抉る質問を突然投げかけてくるマチルダは、そんな地に根を張って生きるコトが出来なかった人間にとっての、何時までも忘れる事ができない情動を不意に突き動かしてくる、つまり悪魔であり天使だ。 

 

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