マリブのブログ

ミネルヴァの梟は迫り来る黄昏に飛び立つ

映画『ホテル・ムンバイ』の私的な感想―神無き街を救う神―

Hotel Mumbai01

Hotel Mumbai/2019(オーストラリア/インド/アメリカ)/123分
監督/脚本:アンソニー・マラス
出演:デーヴ・パテール、アーミー・ハマー、アヌパム・カー、ナザニン・ボニアディ、ジェイソン・アイザックス

 アラブとインドの黒歴史

・・なんだか『バイオハザード』みたいなサブタイを勝手に付けてみたけど。。

 

緊張感を高ぶらせる演出が頗るうまい。

ホテルに集まったブルジョア階級の外国人達の様子、しかめっ面の厳しい料理長の指導なんかも、後半の地獄絵図の様な同時多発テロの被害を盛り立てる為の対比。

インド人のイメージピッタリの、頭にターバンを巻く主人公アルジュンの家族愛は、そんな惨劇を乗り越える為の布石だろう。

 

けれど、冒頭で船に乗って現れる、過激派組織のアラブ人とインド人の違いなんて、自分にはさっぱり分からない。

 

更に、作品全体を通じて終始疑問に感じた、

どうしてパキスタン人が彼らの隣国インドのムンバイの高級ホテルをターゲットにしたテロ事件を起こしたのか、まるで説明がない。

やっぱり歴史を知らないと、この手の映画は意味が全然わかんない。。

なんて、全くの他人ごとの様にほざく連れの為にも、

またまたあっちゃんのYouTube大学で勉強し、その彼らの抱える大きな黒歴史について、少しだけ掘り下げてみた。

 

 

 

 

あらすじ
2008年11⽉26⽇。
インドの五つ星ホテルがテロリストに占拠される。
⼈質は、500⼈の宿泊客と従業員。特殊部隊の到着は数⽇後。
宿泊客を逃がすため、ホテルに残った従業員たち。
部屋に取り残された⾚ん坊を救うため、銃弾の中を⾏く⽗と⺟。
これは「誇り」と「愛」を懸けた、3⽇間の脱出劇。
極限の状況下で、⼈はこんなにも⼈を想えるのか―。
Filmarksより引用

Hotel Mumbai02

 ヒンドゥーとイスラムの対立構造

この事件の実際の舞台となった海岸都市ムンバイは、世界29位のGDPに加え、ビジネス街やボリウッド等商業の中心地でもあり、首都のニューデリーよりもその人口密度は倍ほど高い。

更に首都を上回る94.7%の識字率を誇る側ら、アジア最大規模のスラム街ダーラヴィ地区を持つという、貧富の格差が極めて目立つ大都市でもあるようだ。

171名にも及ぶ死者を出したこの実際の事件では、当初、南インドのデカン高原に本拠地を置くデカン・ムジャーヒディーンというイスラーム過激派武装集団が犯行声明を出していた様だが、世界でたった二か国しかないNPT(核拡散防止条約)に非加盟の核保有国(インドは6番目パキスタンは7番目)でもある隣国パキスタンに本拠地のあるラシュカレトイバの関与の可能性に言及するメディアは意外に少ない。

そして、核を持つ大国の不平等で独りよがりな意思決定に反旗を翻すこの二つの隣国は、互いに世界を脅かす核保有国でありながら、僅かな人の善意を神に委ねる二大宗教国家でもある。

更に、元々コーカソイドに近いアラブ系の人種は、オーストラロイドとの混血種に近い生粋のインド人達に、その外見的な優越感を持ちながらも、科学の進歩の目覚ましい点においては、嫉妬心を抱く傾向も一部にあるようだ。

そんな無粋な憶測を控えるにしても、植民地時代のイギリスの影響を受け、ヒンドゥー教とイスラム教の対立構造の末に分離したインドとパキスタンの宗教性が、この映画には色濃く滲み出ている。

 

陽気なボリウッドのイメージの強いインド映画の中で、異常とも言える程の重苦しさが立ち込めるこの作品は、その尺の大半が、テロリストによる無差別な殺戮シーンに費やされている。

 

けれど、そこから逃げ惑う人々の様子は、ハリウッド的な脱出劇とは何かが違う。

それはこの群像劇の至るトコロに、摂理のようなものが張り巡らされているからだろう。

 

スラムドッグ$ミリオネア』で一躍脚光を浴びたデーヴ・パテールが、一応この映画の主人公だけど、彼の出番はそんなに多くない。

更に屈強な脇役のイメージの強いジェイソン・アイザックスは、やけに嫌みな元ロシア軍人役だが、その目立った見せ場はなく、著名な建築家としてタージマハル・ホテルで事件に巻き込まれるアーミー・ハマーなんかも左に同じ。

その妻役に、どうみてもアラブ系に見えるナザニン・ボニアディが、何故か裕福な貴婦人としてキャスティングされてるけど、その秘密は、映画の届けたかったメッセージを視覚的に問いかけてみたかった一種のレトリックのような気もしてくる。

 

ホテルに取り残された人々が、テロリストからの攻撃による生死を分かつのは、ヒロイックに脚色された人の勇気でも、緻密な計算でもなく、精神性に準拠した神の意志

つまり、その彼らの憂いを鎮める神は、土着の神々でもアッラーでもなく、普遍的な人間本来の無条件の優しさでしかない事を示すかの様に。。。

 

冒頭で靴を忘れるアルジュンも、最期まで自分よりも他人の命を優先して救おうとする料理長も、テロリストの前でイスラム教の教えをファルシ(ペルシャ語)で口ずさむデビットの妻ザーラも、それは同じ。

イスラムとヒンドゥーの二大宗教が持つ悪癖を、批判的に統合させたシーク教の信者でもある主人公アルジュンが、その代名詞でもあるターバンを失くしたまま、事件後にスラムで待つ妻の元に自転車で帰ろうとする姿は、やけに印象的に映る。

 

その無差別に殺傷された犠牲者に哀悼の意を感じながらも、悪意にからめとられる世界でも、僅かな善意が積み重なった末に生まれる奇跡を、ちょっとだけ信じてみたくなる衝動に、無性にかられた。

 

「ホテル・ムンバイ」
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