マリブのブログ

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映画『HANA-BI』の私的な感想―北野映画の秀作、男の美学の教科書―



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HANA-BI/1998(日本)
監督:北野 武
主演:ビート たけし/岸本 加世子、大杉 漣、寺島 進

 素朴で静かな寂しさ

映像業界の人間なら誰しもが、一度は仕事はさせて頂きたかった名優・大杉漣さんの魅力が一番出ている作品です。

自分が彼の死を知ったのは、奇しくも知り合いのスタイリストの通夜のその夜。

寂しがり屋だった彼女が一緒に連れて行ってしまったような気がして、言い様のないもどかしさが込み上げてきたことを今も忘れられません。

ヴェネツィア国際映画祭で金獅子賞までこの作品が受賞したその一端は、ビートたけし演じる主人公の武骨な孤独感を増幅させる、稀代の名バイプレーヤー大杉漣の素朴で静かな寂しさの演技にある気がします。

 

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―――不治の病に冒された妻を持つビートたけし演じる主人公、西はとある事件をきっかけに一線を退いた元刑事。
大杉漣演じる同僚、堀部はそんな彼の良きパートナーだったが、その事件の犯人に腹部を撃たれ、それ以来、車椅子生活を余儀なくされている。
以来西は、堀部やその犯人を捕まえる際に失った同僚の残された妻の身を案じながら苦悩に満ちた日々を送っていたが、病院で妻が余命を宣告されたのをきっかけに、彼はある決心をする。

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 圧倒的な孤独、内に秘めた狂気

北野武監督作品の特徴の一つは、まずその映画音楽を手掛ける久石譲との融合。

劇中、ビートたけし演じる主人公は殆ど台詞を発しませんが、その彼の孤独な日常は殆ど全てといっていいほど、久石の手掛ける静かで優しいメロディによって表現されています。


HANA-BI (1998) - 劇場予告編

しかしそれと同時に、彼が狂気に満ちていくシーンには極力音楽を加えず、その生々しいリアルな躍動感だけを伝えてくるのは彼の王道の美学。

 

シナリオ、人物描写に関しての説明は徹底的に削ぎ落されたシンプルさ。

只悲哀に満ちた男の歯車の狂っていく様子を、淡々と描写し続けています。

この余りにアーティスティックな作品創りの姿勢には賛否両論の声も多いですが、私的にはそんな大人の不器用なダンディズムを静かに描く作品があってもいいような気がします。

この主人公がもしイケメンの人気俳優なら、それは只のナルシストで終わってしまいますが、そこがビートたけしのにくいトコロ。

芝居気のない等身大のどこか愛着のわく彼にだからこそ、そんな男の純粋な幻想は守られ続けていっている様に感じます。

私的に劇中もっとも印象的だったのは、物語の随所で登場する北野武が自ら描いた絵画の数々。

決して上手いわけでもアートなわけでもないんですが、そのどこか温もりを感じさせる印象的な風景は、幼少期を連想させる直観力と想像力に溢れています。

ラストの浜辺で未来のない夫婦が海を眺めている様は、正にその真骨頂。

果てしなく孤独で愛情に満ちた二人の前に突然現れる少女は、北野作品の普遍的なテーマでもある純粋さを痛い程感じさせてくれます。

当時まだ無名のバイプレーヤーだった大杉漣、寺島進達は、そんな彼のあどけない一面に魅了され、その俳優としての純朴さを継承する事により、飾り気のない皆に愛される名脇役として成長したんではないでしょうか?

 

『HANA-BI』TSUTAYAでレンタル可能です。

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