マリブのブログ

ニ匹ののら猫と一緒に随時三匹の飼い主を募集中の元帰国子女。。オススメの映画やドラマの感想を徒然に紹介しています。

      
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映画『ミスター・ガラス』の私的な感想―19年の時を経て完結するシャマラントリロジー―(ネタバレあり)

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Glass/2018(アメリカ)/128分
監督/脚本:M・ナイト・シャマラン
出演:ブルース・ウィリス、ジェームズ・マカヴォイ、サミュエル・L・ジャクソン、サラ・ポールソン、アニャ・テイラー=ジョイ

 シャマランの意思

アンブレイカブル』を世に送り出してから実に19年。。

リアルな時を経てその畢生の仕事を終えた監督M・ナイト・シャマランの執念には、まず手放しで称賛したい。

 

けれども、相変わらずの難解なレトリックやコトバ遊びはあの時のまま。。

その中二病的発想の中で醸成されてきた彼の真意は、マーベル全盛期の現代でいったいどこまで観客の心に刺さる事ができたのだろうか?

 

そんな余計な心配事がアタマの中を終始掠め続けてしまい、イマイチのめり込めなかったというのがこの作品を観終わった上での率直な感想でもあるのだが・・

 

2004年の『ヴィレッジ』以降、『レディ・イン・ザ・ウォーター』、『ハプニング』と立て続けに小手先のトリックに頼った作品が不評を呼んでしまい、彼の名声は一瞬地に落ちてかのようにも見えたが、結局その根底にあるのは、大衆娯楽映画の中に自身の身を置きながらも、その危うさを憂う彼の本能から発せられる衝動なのだろう。

 

この映画にはやはり、それ単品では語り尽くせないシャマランの強い意思がある。

 

なので今回はその第一作目からを振り返った上で、彼が思い描く人が内に秘める可能性についてゆっくり掘り下げてみたい。

 

 

 

 

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 『アンブレイカブル』が残したしこり(※以下、ネタバレあり)

2000年に公開されたシャマランの代表作『アンブレイカブル』は、『シックスセンス』から彼の世界観との相性のいいブルース・ウィルスとの化学反応により、ある程度の評価を受けた。

 

先天性の骨の疾患を抱えるサミュエル・L・ジャクソン扮するイライジャが、その暗い思春期の果てに母親から貰ったアメコミの世界に夢を馳せながら大成していくトコロなんかにも、うだつの上がらない若者たちへの希望を込めている様でそれなりに好感が持てる。

対する主人公のデヴィッドもまた、その仄かに感じる私生活での違和感から、自分が超人的能力を秘めている事を悟り始め、現実世界でアメコミヒーローとして覚醒していく描写にも、既成の概念に捕らわれないダークな質感での演出が中々に興味深い。

そして後に対峙していく二人が気付く世界には、ヒーローの実在性を証明するかのような様々なトリックが施されているわけだが、これも少々ご都合主義とは言えど、SFサスペンス界の急先鋒と謳われていた彼ならではの、独特な既視感を利用しての巧みな世界観が作り上げられていた。

けれどそのテクニックに溺れるが故に、シャマランが毎度どうしても軽視してしまいがちなのが、ヒーローの回りの無力な大衆たち

イライジャがデイヴィッドを覚醒させる為に巻き起こした数々のテロ事件の被害者は、彼のプロット上では常に必要不可欠な犠牲でもある。

ここら辺のわだかまりに気付いてしまうと、そのヒーロー待望論とは対極にある愚能な民衆的発想力にどうしても非難が集まってしまうのだが、敢えて彼を擁護するのであれば、それは社会の弱者的立場の人間の視点から見る幻想とも言えよう。

 

つまり、シャマラン自身を投影させたかのような不幸な生い立ちのイライジャがその淵に立った時、見えてくるのは偏った変身願望。

そしてその満たされない欲求を否定するかのような現実社会そのものが、悪の化身であるかのように・・

この歪んだ錯覚の中では、やはりそれに付随する多くの顔のない犠牲者にはスポットライトが当たらない。。

それをミステリアスなトリックの名の元に開き直ってみせてくれるシャマランの情動は、一見清々しくもあるが、少々強引な手法と言わざるを得なくなってしまう。

 

 

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 『スプリット』が魅せる悪の真意

そこから実に16年の時を経て、完成させた『スプリット』では、シャマランは悪の化身に少々深い意味合いを持たせてきた。

ラストキング・オブ・スコットランド』で、英国アカデミー賞の主演助演男優賞にWノミネートされる程の実力を持つジェームズ・マカヴォイの怪演で話題を呼んだ本作では、その多重人格者の犯罪者であるケビンの過去に、歪んだ幼少期を背負わせている。

バリー、パトリシア等が“照明”係を務める24の人格を持つ男の狂気は、その言い知れない闇の中で誕生せざるを得なくなった負の産物。

そしてそんなソシオパスな彼を、正面から見つめようとする一般女性も劇中には二人程登場する。

一人は、実在する人間関係に必要な要素を説いてみせたフレッチャー博士から引用された彼の精神科の主治医で、もう一人は彼が誘拐した少女の中の一人・ケイシー。

主治医の老婆はケビンの中に隠れていた最後の人格の本性を見抜けずそのまま惨殺されてしまうが、興味深いのはその悪の化身である最終人格“ビースト”が、ケイシーの内に秘める純真を見抜いて、彼女を襲わなかった点にある。

「失意の者はより進化した者」

と説くビーストは、つまりシャマラン劇場の中においての悪者の定義を現実社会としっかり紐づけてみせてくれた。

この台詞により、シャマランが見せる世界が勧善懲悪的なヒーロー待望論ではない事を強く印象付けたわけだが、更にラストシーンで彼女が保護されたパトカーの中で、たっぷり時間と使ったケイシーの気づきにも、中々に味わい深いものがある。

それは、それまで実の叔父から性的被害を受けてきた彼女が、悪に見初められながらも、声なき声を吐き出す勇気を持てた瞬間でもあり、それは同時に悪こそが純粋で歪んだ社会悪を正す象徴である事を印象付けている。

この辺の穿った見解は少々尖り過ぎかもしれないが、それまでの一辺倒なシャマラントリックからは大きく逸脱し、どこか現実世界へのアンチテーゼを内包させた意外な作風でもあったのだが・・

 

 

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 『ミスター・ガラス』の迷い

スプリット』のラストにしっかり続編の匂いを漂わせたシャマランが、満を持してとうとう発表したこの作品では、それまでの個性的なキャラクターを総出演させ、中々に遊び心を忍ばせた展開を見せてくれた。

劇中のキャラクターの台詞に『アンブレイカブル』からのリアルタイムな年月の長さを語らせたのもその一つだろう。

更に冒頭のアニメ好きな少年たちの蛮行や、エアーヘッド女子を暗喩したチアリーダーたちが誘拐されているのも、現代の想像力の足りない若者への強烈な皮肉だろうが、復讐の天使と化したケビンと“緑の服の男”と呼ばれるようになったデイヴィッドの直接対決は意外な展開をみせ始める。

 

それは、二人が覚醒したにもかかわらず、大がかりな装置やCGを織り交ぜたアクションシーンには発展しない事。

ここでようやくシャマランが、大味なマーベル的ヒーロー崇拝映画に異論を唱える者である事が垣間見えてくる。

つまり、彼の主張する本物のヒーロー像は、浮世離れした超人説等ではなく、身近の誰しもが叶える事ができる勇気を具現化させた実体なのだと。。

更にはそれを押さえつける組織が、警察や学者、或いは科学の進歩であるという構図も中々に興味深い。

 

無力だと感じた瞬間から誕生したビーストが「存在理由を確かめる為に人を殺す」という本能も、アメリカ崇高主義者の知性を強烈にディスる描写なんかも、正に現代社会の歪でのたうち回る弱者の意思をしっかり汲み取ってみせている。

 

・・それでも、、、

“マスターマイン”である黒幕のイライジャは、どうしても惨めに写ってしまう。。

それは彼があらゆるトリックを駆使してでも世間に拡散したかったそのヒーロー実在論は、ラストに彼に浴びせかけられる言葉どおり、ただ自説を証明する事だけが慰めの虚しい立証であったからだ。

そしてそんな彼らを制御しようとする団体の裏に、均衡を維持し秩序を守る謎の集団なんかの影をチラつかせられてしまうと、結局はシャマランが否定したはずの蒙昧なアメコミワールドの中に全てが立ち戻ってしまう様に感じ、少々食傷気味な気がしてきてしまう。。

そしてイライジャが名乗るこの作品のタイトルでもある『ミスター・ガラス』の真意に、その壊れやすい心と身体、更には朧げに写る鏡の意味合いをも暗喩させていたのだとしたら・・・

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 ヒーロー待望映画にみる社会の写し鏡

結局シャマランが19年間も温め続けてきたヒーロー伝説は、その着地点がうやむやのまま終わってしまうのだが、ラストのコンコースで三人の超人に所縁のある者達が手を取り合う描写には、何が意図されているのだろうか?

劇中にも語られていたとおり、彼が説くその実証説は、ただ立ち止まったままで見つかるものではない。

細かいカットバックを織り交ぜみせてくれたこの前作からの壮大なトリロジーは、SNSの普及により超人の存在が全世界に拡散されるというオチだけでは少々物足りない感じもしてきてしまうのだが・・

 

そこでこの作品のタイトルを強引に咀嚼していくと、シャマランが含みを持たせて伝えてきた僅かな意思が感じられてもくる。

つまり彼は侘しい死を迎える“ミスター・ガラス”に、もろく壊れやすい現代人の写し鏡を象徴していたのではないだろうか?

エンドロールで流れる割れたガラスの破片には、三部作からなるそれぞれの思い出と共に、超人と化したキャラクター達の人間味溢れる描写が映し出されているカットが忍ばせられている。

 

・・更に敢えてその拡大解釈を広げてみると、、、

シャマランの説く実在のヒーロー待望論は、希望を持てない凡庸な時代の中での、人の強い意思決定とその勇気を奮い立たせるヒューマニストな側面内包している様にも思えてくる。

それは妻との間にわだかまりを持つ夫、暗い過去を背負う若者のトラウマ、更には難病を持つ人間が夢見る自己承認欲求の表れでもある。

 

架空の世界に強く夢を見る現象は、その現実に不満が募りつつある時代の兆候

自分たちの身近にある社会の歪みから目を背けてしまうのは、その心に余裕を持てない個人主義が招く未来に待ち受けている暗いディストピアにも感じてきてしまう。

 

時勢におもね、大味なアニメ原作、マーブル、DC系の作品が劇場の大半を占める昨今の映画界の中で、シャマランのこの純粋な少年心からの警笛がどこまで観客に伝えられたのかはかなり疑問の余地は残るが、自身の家を抵当に入れてまでこのシリーズを完結させたその気概だけは、ゆっくり咀嚼して自分の目標にも掲げていきたい。

 

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