マリブのブログ

ミネルヴァの梟は迫り来る黄昏に飛び立つ

Netflix『13の理由』シーズン4第9話の私的な感想―それぞれの最後の夜―(ネタバレあり)

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13 Reasons Why Final Season Episode9/2020~(アメリカ)
製作総指揮:セレーナ・ゴメス
出演:ディラン・ミネット、ジャスティン・プレンティス、アリーシャ・ボー、デレク・ルーク、グレース・サイフ、ブレンダ・ストロング他

 青春の影

暗黙の裡の宗教観で頭を抑えられてきたアメリカ留学では、自分は色々な事を学んだ。

その大部分を過ごしたバプテストのミッションスクールの高校は、およそ想像もつかない程の閉鎖的な価値観を丸ごと植え付けられた、まるで純朴な羊の群れの様だった事を、今でもはっきり覚えている。

 

アメリカの高校に、日本人が思い描く程の、理想的な自由はない。

何故なら彼らは、絶えずスクールカーストに悩まされ、陰険ないじめよりもずっとストレートに、身近に肌の色の差別と物理的な暴力が溢れてるから。。

 

今回のエピソードでは、そんな高校生活の集大成とも言える“プラム”に焦点を当てる。

日本の高校で言えば、修学旅行?或いは学園祭?

どちらにしろ、シニアイヤーで一度きりしか経験できないこの社交場は、そのパートナーを見つけるのにも一苦労する、大人の試練の始まりだ。

その思い出に、ろくでもない失恋話しかできない自分には未だに夢の話だけど、クレイ達と全く同じ様に、青春の影を引きずる若者にとっては、その煌びやかな舞台が、生涯忘れられぬ夜にもなり得るだろう。。。

シーズン4第8話の感想はコチラ

 

以下、『13の理由』シーズン4第9話のネタバレを含んだ上での感想です。

まだご覧になってない方はご注意下さい。

 

 

 

 

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 プロム(あらすじ)

休校が明け、ジャスティンはクスリの副作用に悩まされている。
彼はクレイの忠告にも耳を貸さず、びっしょりと汗をかいた服のまま、ベッドから出ようとはしない。。

それぞれの生徒を自室に呼び、事件の究明に乗り出す学長。
彼は、手始めに呼んだザックを停学処分にし、プロムの中止と暴動のきっかけを探るも、生徒会長のジェシカからは強い反発を受け・・

ネバタ大からのスポーツ推薦枠のオファーをケイレブは必死に説得するも、修理工場を守りたいトニーは、それに応じず。。

ジェシカの部室にやってきたディエゴは、暴動の中、彼女の身を守ろうとしたジャスティンの真意を探るも、彼女はそれに答えようとはしない。。

カウンセラーに自分のトラウマを打ち明けたクレイは、解離性障害である事を受け入れた上で、未だ自分達の秘密を打ち明けようとはせずに。。。

その夜、クレイの部屋に集まった仲間に、彼は自分の病状を告白。
彼らは一様に頭を悩ませながら、ブライスの事件の隠ぺいと、モンティーへの冤罪計画が明るみに出ない為の対策を議論する。
やがて、プラムの開催をカモフラージュにして、それぞれの抱え持つ秘密を一部だけ親に打ち明け、自分等の味方に付ける事を提案するチャーリー。。

 

翌朝クレイ達は、それぞれの親に真実を告げる。
クレイは、その解離性障害の末、引き起こしてきた事件を。
ジャスティンは、彼らの物を盗み、再度クスリに手を出してしまった事を。。

リバティ高の後援会会長を務める父親に、自分がバイセクシャルである事を告白するチャーリー。
彼の父は、おくびなくその兆候を察していた事を伝え、変わらぬ父子の愛情を誓う。

嘆願書を携えたジェシカは、校長室へ。。
彼女は、SNSで拡散された警察の過剰対応への非難の声をチラつかせながら、その暴動の全責任を自分が負う事を条件に、学長による捜査の中止と、プラムの開催を校長に詰め寄る。。

 

公にBFとして、アレックスの家族に紹介されたチャーリーは、明くる日その喜びから、彼をプロムに誘う徹底抗戦を開始。
写真を整理する側ら、何気なくハンナの写真を見つけるエステラに声をかけたタイラーは、思いがけず彼女にプロムの同伴を快諾される・・

修理工で働くトニーの元へは、ドーナツを持ってやってくるケイレブが。
従業員等が見守る中彼がその箱を開けると、プロムに誘うケイレブの愛のメッセージが・・

タキシードに着替えたクレイは、アレックスの同伴で行くプロムにジャスティンを誘うも、彼はその重い腰を上げようとはせずに。。

 

盛大に飾り付けられたプラム会場へとやってくる面々。
売春婦を連れ、トイレでクスリに興じようとするザック。
思いを断ち切れないディエゴを袖に、颯爽とアニと連れ歩くジェシカ。
満面の笑顔を浮かべるチャーリーとケイレブとは対照的に、アレックスとトニーは、はにかんだ笑顔を浮かべる。

やがて、クレイの元へやってくるアレックスの父は、ブライス事件の捜査を続ける同僚ディアスの配慮を彼に伝えるも・・

 

DJブースのレコードが鳴ると、踊り始める生徒達。
自暴自棄に振舞うザックとジェシカの横で、アレックスはふとブライスを思い出す。。
その彼への憎しみが消えないジェシカと、慙愧の念が頭を霞むザック。
やがて彼は、青春を取り戻すかの様に、連れの女の元へと向かう。。

ひとりぼっちで感傷に浸るクレイの元へは、トニーとケイレブが。
彼は、偶然の重なった高校生活を振り返り、その奇跡的に培われた友情を、感慨深げに語り始める。

ブライス殺しの犯人を、再度追求しようとアニの元へやってくるウィンストン。
けれど彼女はその言葉をはぐらかし、救いようがない程悩み抜いてきた自分達の友情を、改めて、固く信じ貫いている事を彼に伝える。。

・・チークタイムが始まると、ウィンストンの前に現れるモンティーの幻想。
ウィンストンが、何も言わずにその差し伸べられた手を固く握ると、モンティーは彼の心の中に、その怒りを捨てる言葉を投げかける。。
やがて、熱い口づけを交わした後、会場を後にするモンティーの姿をウィンストンは見つめ続ける。。

 

会場も大詰めを迎え、プロムキングに選ばれるアレックスとチャーリー。
壇上で冠を戴く二人は、集まる生徒達の熱気に押され、熱いキスを交わす。。

その様子に触発され踊り始めるトニーとケイレブ。
タイラーの腕の中で、楽しそうに回るエステラ。
やがて、アニとジェシカが腰をくねらせていると、タキシードに身を包んだジャスティンがやってくる。。

・・チークタイムのスローな音色の中、二人は強く抱きしめ合う。

その様子を見詰めるアニはクレイに寄り添い、愛し方の分からなかった自分達の過去を振り返り・・・

・・楽し気に踊る生徒達に混ざれずにいるクレイの元にやってくる、彼の母親。

その親の持つ永遠の蟠りを告白する彼女を、クレイはダンスに誘い出す・・

 

やがてその盛り上がりが最高潮に達した時、ジャスティンは床に崩れ落ちてゆく。。。
 

 

 

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・・・そんな劇的なトコロで終わらせないでくれ!!

ファーストエピソードから垣間見せてきた葬式の伏線が、ここにきてそれがジャスティンなら、もう、今更誰かを責める気にはなれないけど、正しく、全員のトラウマとなる夜になりそう。。。

本当に今回の最終章の犠牲者がジャスティンだとすると、さすがにこれ、ブライスと二人の死を背負いこむ事になるジェシカは、一体どうやって立ち直れるんでしょう・・?

 

ナードを代表して、アレックスとチャーリーのゲイカップル誕生は、全力で応援したいトコロだけど、タイラーとエステラの方は、どうも現実味がなさ過ぎてあんまりしっくりきません。

・・それが例え、ハンナによってエステラにかけられた恋の魔法だったとしても・・w

 

それに引き換え、ウィンストンとモンティーのラストダンスはあまりに切ない。。。

淡白だったアニに説教を受けたウィンストンも、元はと言えば、それもすべてモンティーへの愛情ゆえの事。。

更に、思い返せばレイプ犯のモンティーさえも、性差別に苦しむ少年だったワケで。。

これをチャーリーの父の様に寛容に受け止めてもらえる環境さえあれば、或いは、彼らの未来は今と違ったカタチになっていたのかもしれない、なんて思うと・・・

高校のクセに、校長と学長とが両方出てきて随分ややこしかったけど、学長=ディーンが、このLGBTを受け入れられない世代の代表者として、対比させる相手が必要だったのだとしたら、それも納得しましょう。。

 

相変わらずのぼっちクレイが、母親をダンスに誘うシーンはちょっと気持ち悪いけど、親の立場になってみれば、その気持ちは凄くよく伝わってきます。

 

・・当たり前だけど、、

親から見れば子供は永遠に子供。。

 

その心の距離が遠のけば遠のく程、彼女の台詞通り、不安はどんどん膨らみ続けます。

・・ましてやクレイの様に、輪をかけて情緒不安定な子なら尚更。。

 

解離性障害なんて病気の枠で括られても、彼が人の愛し方がわからなくなったその原因は、結局やっぱり、救えなかったハンナの自殺にあるのでしょう。

 

いよいよ残り後1話迄きて、クレイ達はその秘密を隠し続け大人になれるのか・・・?

その砦となる最大のキーマンが、未だに書類の内容を明かされないザックだと、やっぱり彼らの友情は、ここで途切れちゃうんでしょうか・・・?

 

『13の理由』は、Netflixで鑑賞できます。

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