13 Reasons Why Final Season Episode8/2020~(アメリカ)
製作総指揮:セレーナ・ゴメス
出演:ディラン・ミネット、ジャスティン・プレンティス、アリーシャ・ボー、デレク・ルーク、グレース・サイフ、ブレンダ・ストロング他
声を上げるムーブメント
泣いても笑っても残り後3話。。
正直、あまりにティーン向けの描写が多過ぎて視聴を躊躇う事も多々あったけど、その切実な怒りと訴えが滲み出るこのドラマから目を離す事が、どうしても出来なくて・・
とは言え、今回の『13の理由』に、ツッコミどころは大いにある。
子供向けの妄想シーンが多用される為、物語の中心であるはずのクレイからはどんどん現実味が薄れ、構成を短くまとめた10話編成が仇になったのか、主要人物の掘り下げ方もあまりに浅い。
極めつけは、今回のシーズンからは、サスペンス要素がからっきし無くなってしまった。。
これ迄の様な、シーズン全体を覆いつくすミステリアスな”新犯人”の存在自体が欠如してる為、スリルとサスペンスだけを求めるライトな視聴者層が、このドラマから離れてしまった事も十分に頷けてしまう。。
だけど、図らずも時代は、声を上げるムーブメントの真っただ中。
ミネソタでの黒人圧死事件に端を発したその渦中のアメリカでは、コロナで抑圧されてきた鬱憤も相まって、次期大統領選挙戦にまで影響を与える程の激しい怒りの声が、国中に吹き荒れている。
いじめや差別、それによって引き起こされる国家権力の暴走は、デモという個人の主張の場がない限り、改悛する事はない。
大国の主張する民主主義に寄り添って生きてきた日本人は、何時からか、この間違いに奮起する勢いをすっかり失った。
今回のエピソードは、そんな斜め上の角度から迷走する社会を見守る日本人に、暴徒化する若者の心理を群衆視点から、ほんの少しだけ身近に感じさせてくれるはずだ。
以下、『13の理由』シーズン4第8話のネタバレを含んだ上での感想です。
まだご覧になってない方はご注意下さい。
合否(あらすじ)
クレイの夢の世界。。
西暦2161年の未来で、ロボットに淘汰されかけている人類側のレジスタンスとして、クレイは必死の抵抗をみせる。
彼の相棒を努めるのは良心の芽生えたサイボーグブライスと、離反後に復帰したアニ。
やがて、次々と倒れる仲間達の手を握りながら、ふとクレイの心に疑念が生まれる。。
タイラーが警察のおとり捜査に協力していた事を知り、愕然となるトニーとクレイ。
やがて、それぞれの家庭に大学の合否通知が送られてくる。。
滑り止めの大学からの結果通知を待つジェシカとは対照的に、アレックスは名門大学に合格。
しかし、その蟠りを彼の父であるスタンダールに告げると、彼は息子の懸念を精一杯和らげようとするが・・
ジャスティンの合格通知の届いたジェンセン家では、その褒美としてゴードン・ライトフットのコンサートに行くという話題が。。
けれど、クレイ達が隠語に使っていたそのフォークシンガーの名前を両親が知っていた事で、二人は眉を潜め・・・
学校の暗室で見つけたブライスのテープを聴く、ディエゴ、エステラ、ウィンストン。
ジャスティンがジェシカの報復の為、ブライスを殺害したとの見解を語るウィンストンに対し、エステラはその彼の真意に、僅かな疑念を抱き始める。。
ケイレブの家に移り住んだアニの元には、9校からの合格通知が。
しかし、その全てが全額学費免除ではない事に頭を悩ますアニに、トニーはブライスの為の金を受け取る様促すも・・
ジェシカへの不信感が拭えぬまま、彼女の真意を確かめようとするディエゴ。
それを宥める様に彼にキスをする現場を、ジャスティンは窓外から切なげに見詰める。。
銃の不法所持の不起訴を条件に、警察への内密な捜査協力をしていた事を打ち明けるタイラー。
彼は、自分に疑いの目を持つその不信感を吐き出すと、クレイ達は言葉に詰まってしまう。。
サークル仲間に、校長から学校の安全対策案を求められていた事を打ち明けるジェシカ。
やがて、その行き過ぎた学校の対応に不満を漏らす仲間は、ジェシカの裏切りに落胆を示すも、アニだけはその彼女の失敗を庇おうとする。
レイシストなトニーの対戦相手の情報を知ったケイレブは彼に忠告を促すも、リングだけが唯一の公平な場だと信じ貫くトニーの決意は、揺らぐ事なく・・
・・パンチドランカーの様にマットに沈められるも、そこから何度も立ち上がる彼は、やがてようやくその相手をねじ伏せ、その雄姿に感銘を受けた大学のコーチからも、スポーツ推薦枠でのスカウトのオファーを受け取る。。
頻発する両親のデートに疑問を感じたクレイは、その不審な彼らの後を車で追う。。
・・夜な夜な保護者達が集まっていたのは、リバティー高の一室。
そこで彼は、親が子供の行動を把握するアプリを自分達の携帯に仕込んでいた事実を知る。。。
驚愕するクレイは、バラバラになりかけている仲間を招集しようとするも、万事休す。
やがて、唯一その呼びかけに応じたジェシカから、アニがブライスの母親と密会する現場を、アレックスが目撃した事を知らされ・・・
翌朝の高校では、痺れを切らしたディエゴがジャスティンに詰め寄る。
やがて、その一触即発の緊迫する空気の中、二人が喧嘩を始めようとすると、やってきた保安官は拳銃を取り出し、ドミニカ出身のディエゴだけを拘束。。
これに憤慨するジェシカとクレイは、校長と対峙。
やがて、全校生徒を連れ、彼らは学校の門を出る。
拡声器を持ち出してきたアニは、それをジェシカへ。。
彼女は集まった生徒達の前で、警察の介入する学校体制に強く反発の意を唱え出す。
それに呼応する声が広まる一方、校内に留まるザックとアレックス。
そして怯える事に嫌気のさした二人は、金属バットを片手に校内を走り回り・・
暴徒化する生徒達と対峙する学長らは、遂に校門前をバリケードで封鎖。
その立ち塞がる武装警官を前に、トニーが尻込みをしていると・・
やがてジェシカの合図で、彼らは詰め寄る警官に向かってモノを投げ始める・・・
窓ガラスを割り、校長室に立てこもろうとするザックとアレックス。
しかし、その机から自分の書類を見つけたザックは、アレックスだけを裏口から逃げ出させる。。
暴動へと発展していく現場で、次々に取り押さえられていく生徒達。
やがて、エステラやサイラス迄もが捕まった処で、追い詰められたジェシカは警官のヘルメットに唾を吐く。
すると、それに応戦する警官隊を前に尻込みするディエゴをかき分け、ジャスティンは勇敢に立ち向かって行く。。
動揺が広がる生徒達が逃げ始めると、拡声器を手にしたクレイが彼らの前へ。。
そして、その大人の欺瞞に怒りを覚える彼の声に、呼応する輪は瞬く間に広がり・・・
倒れたジャスティンに手を差し伸べるディエゴ。
タイラーを拘束しようとする警官には、躊躇しながらもトニーが応戦。
道端で気を失っているチャーリーを見かけたアレックスが彼を救い出そうとすると、その背後にあった校長の車が、突然、強烈な爆音を轟かせる。。。
事件の経緯をクレイに問うカウンセラー。
やがて彼が、校長から送られてきた動画をクレイに見せると・・
そこに写っているのは、彼の車を放火するクレイの姿。。
その呆然とするクレイの姿を、カウンセラーは鋭い目で見詰めている。。。
・・・とうとうクレイの奇行がカメラに抑えられるハメに。。
この様子だと、他の数々の怪事件の犯人も、やっぱりクレイ?
ラストの学園紛争の様子はちょっとポップ過ぎるような気もするけど、まるで警察国家の様に、権力を行使するオトナに抵抗する子供達の躍動感を、久しぶりにドラマでたっぷり堪能出来ました♪
これまでの描写の中身が薄過ぎて、只の賞金稼ぎにしか見えなかったトニーのボクシングを続ける本当の理由が、人種やLGBTへの偏見からくる怒りだなんて、あまりに切な過ぎる。。
彼に、リングの上だけは「唯一の公平な戦い」だなんて台詞を言われちゃうと、数多の格闘技選手達の憤りを、そっくりそのまま代弁してるかのような気がして・・・
ケイレブに、“死を急ぎたがる子供”なんて茶化されても、彼が格闘技にのめり込む理由は、やっぱり、その虐げられたアイデンティティの確保なんだなあ。。なんて。。。
更に、その彼が暴動で逮捕される寸前の処で助け出す保安官も、きっとあれが大人の都合の中での、唯一の本音であってほしいな。。。
再びクスリに溺れ始めたジャスティンは、あまりに可哀そうでもう見てらんない。。
・・寂しさを紛らわす為のクスリで更に孤独になり、その孤独に耐え切れずにジェシカに告白しても、彼女は相変わらずの奔放ぶり。。。
てゆーか、ディエゴを監視する大義なんかどーでもいーから、いい加減そろそろもうちょっとジャスティンに優しくしてやろうよ。。
そんなビッチ女を取り合う男二人の青春ドラマが、いきなり変化するのも『13の理由』ならではの醍醐味。
黒人どころか、ドミニカ生まれのヒスパニック系ってだけで、さっそく校内で拳銃を取り出しちゃう保安官は、流石に誇張が過ぎる気もするけど、結局、武装する者がそれを最終手段に使おうとするのは当たり前の話で。。
その根底にある、自分と違う相手に対する恐怖心を克服しない限り、何時まででもこの負の連鎖が続く事を、人は何時になったら気づけるんだろう?
・・これを、気づいても直せない人の悲しい永遠の性みたいには思いたくないけど。。
おかげで、正直、どーでもいー正義感丸出しキャラだったディエゴが、肌の色だけでジャスティンと同じ土俵にも上がれない事で、彼を応援したくなる気にもなってきちゃいました。。。
・・因みに、進学を放棄し始めたザックが、アレックスを追い出す前に校長室で見つけ握り潰した彼の書類には、結局何が書いてあったんだろう?
『13の理由』は、Netflixで鑑賞できます。