マリブのブログ

ミネルヴァの梟は迫り来る黄昏に飛び立つ

Netflix『13の理由』シーズン4第1話の私的な感想―過去の亡霊―(ネタバレあり)

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13 Reasons Why Final Season Episode1/2020~(アメリカ)
製作総指揮:セレーナ・ゴメス
出演:ディラン・ミネット、ジャスティン・プレンティス、アリーシャ・ボー、デレク・ルーク、グレース・サイフ、ブレンダ・ストロング他

 自己完結する日本人

日本人は、いつからこんなにヒトに優しくなれなくなったんだろう?

SNSの暴力で自殺に追い込まれた某女子プロレスラーのニュースから、ふとそんな疑問が生まれた。

ネットを道具と割り切ってしまうのは簡単だけど、人の知性が生み出したツールに人の心が追いつけないのは、なんだかあまりに悲しすぎる話だ。。

 

こうして今ブログを書いている自分も含め、SNS上にごまんと散乱する宣伝広告記事の向こう側にでも、きちんと人は存在する。

その幻想にどこか惹かれながら、何気ない愚痴や不満、或いは同調を求める声をtwitterやInstagram等にうっかり洩らす自分達は、今その真横にいる誰かを差し置いてでも、表層的でもいいから、結局やっぱり誰かと繋がっていたいのだ。

 

いよいよファイナルシーズンを迎えたこの学園ドラマ『13の理由』が、当初のサスペンスから大きく逸脱して社会派ドラマに切り替わってきたのは、勿論そこに需要があるから。

つまり、一見初心で未熟な学生達の心の葛藤のように見えるこのドラマは、その根っこの一番大事なトコで、万人の持つ心の弱さを抉り出す。

そして誰かに相談するよりもずっと手軽に、悩みや疑問を即座に解決してくれる便利ツールの副産物として、自分達はいつの間にか他人と直接かかわる事が怖くなってしまったんじゃないだろうか?

 

宗教観のない日本人には、信じられるものが極端に少ない。

その夢をアニメやフィギュアの中だけで消化しようとするのは、ある意味健全であったとしても、世界一想像力があるのに自信がない日本人故の悲しい性でもあり、それは同時に何でも自己完結させてしまう悪癖を生む。

そんな自分達が、SNSを只の自己表現するだけの装置から、傾聴や深化を伴う新時代の自己開発ツールに飛躍させる為にも、若い世代は自分の学生時代の悩みと見比べて、忙しい大人はちょっとホンネを顧みる為にも、初老を迎える世代は、自分達が耐える事で純真な心を蝕んでしまったその責任を考え直す為にも、このドラマをほんの少しだけ、覗いてみてほしい。

シーズン3第13話の感想はコチラ

 

以下、『13の理由』シーズン4第1話のネタバレを含んだ上での感想です。

まだご覧になってない方はご注意下さい。

 

 

 

 

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 冬休み(あらすじ)

棺の置かれた教会で、スピーチをしている黒人女性。
彼女は大人が子供に伝えられなかった事を、聴衆に問いただす。。

6ヵ月前のテロップ。
悪夢にうなされているクレイは、ジャスティンに連れられモンティーの待つ刑務所へ。
彼に罪を着せた自分の懺悔を何度も繰り返すクレイだったが、モンティーが次第に本性を現し始めると、クレイは彼をレイプ魔と非難する。
やがて、モンティーは咄嗟に机を超え、クレイに飛びかかる。。

 

大量の汗をかき目覚めるクレイ。
朝食の席では、成績が落ちた事を心配する彼の両親の言葉は耳に入らず。
やがて、父親がシンクで割ったグラスの破片を指に押し当て、その指から流れる血を見つめ、モンティーに罪を着せた良心の呵責に苛まれていく。

タイラーからの連絡で、彼を警察署に迄送り届けるクレイ。
怯えるタイラーに的確なアドバイスを伝え、彼はその背中を見守る。
すると、バックミラー越しに写るモンティーの幻覚がクレイをパニックに陥れる。
やがて落ち着いて戻ってきたタイラーは、アレックスの父親の協力で、川に捨てた銃の一件を穏便に誤魔化した事を伝える。
二人はその秘密を他言しない様誓い合うも、クレイは自分が見え始めた幻覚症状の事は、タイラーにも打ち明けられないまま。。

施設から戻るジャスティンの復帰祝いに、久しぶりにクレイの家に集まる仲間達。
ブライスの家からの引っ越しを決めた事を、クレイに伝えられないままでいるアニ。
ほろ酔い気分のままのザックは、ジャスティンとの再会を待ちわびるジェシカに、その様子を咎められる。
やがてクレイの親に連れられ、やってくるジャスティンと熱い抱擁を交わすジェシカ。
けれど、ようやく薬物依存を克服した彼は、ジェシカと昔の関係に戻る事を拒み、過ぎ去る彼女の背中で大粒の涙を零す。。

それぞれのクリスマスを過ごす家庭。
アレックスの父親は、タイラーが警察に呼び出された事が気がかりな息子を宥める。
クレイの両親は、ジャスティンと初めて過ごすクリスマスに、新型のスマホと家族の写真を与える。
ジャスティンと別れたショックから、自分の家に引っ越す様アニに提案するジェシカ。
残り少ない新学期を、リバティー高に転校して過ごす事を決めたウィンストンは、クレイ達の映る写真を見詰めている。。。

アニとの同居が決まったジェシカは、彼女を誘い森へやってくる。
そこで彼女は、徐にブライスの遺言が録音されたテープ取り出し、燃やし始める。
やがて立ち昇る炎の向こうに、ブライスの幻覚を見て激しく動揺し始めるジェシカ。。

年が明け、新学期が始まった高校では、その入り口に金属探知機が設置されている。
タイラーの一件から、再び疑心暗鬼に陥るクレイ。
あからさまに身体検査を拒否したジェシカには、校長からのお咎めはない・・

やがて“進路フェア”に集まる学生の中に、ウィンストンの姿を見つけるアニ。
ジェシカの主催するレイプ撲滅運動の同好会には、モンティーの妹エステラがやってくる。。
その彼女の姿を見つけるアメフト部のディエゴ
そしてその彼が、チャーリーの制止も振り切り、モンティーの追悼の為にも彼のユニホームをエステラに着せようとすると、そこにやってくるクレイ。
彼は徐に怒りを爆発させ、ディエゴ等アメフト部の仲間との大乱闘へと発展。
やがてぼろぼろにされたクレイの様子に気遣うも、彼の不審な行動にアニは眉を顰めていく。。

タイラーに接近し、写真部の部室へと潜り込むウィンストン。
不安を募らせるアレックスは、ザックと気晴らしのドライブへ。
トニーは不法滞在で国外追放された両親を呼び戻す為、大金を求めボクシングの試合に出場する事を強引に決意。

顔の痣の理由を両親に咎められたクレイは、再び妄想の世界へ。。
夢の中のアニはそんな彼に、「まず自分を救う事」と手を差し伸べるも・・

 

カウンセラーと会話を交わしているクレイ。
彼は、その制御できない感情をカウンセラーに打ち明け、幼い頃から患っていた自分のパニック発作を告白。
そしてその感情が暴走した時、意図せずとも、回りの人間を傷つけてしまう事も。。

苦悩の広がるアレックスを連れたザックは、古びた建物の屋上へ。
手すりのないそのへりを歩きながら、彼らは悩みを紛らわそうとしている。
やがてその恐怖心が解けた瞬間に、思わずザックに口づけをするアレックス。。

 

ブライスの事件の真相を追う保安官は、5時間に及ぶアニの事情聴取の録音テープがない事に疑問を持ち始める。
ブライスに銃を突きつけるクレイの防犯映像を見つめ、彼はアレックスの父親に、タイラーに何らかの協力を仰いだ事を密かに仄めかすが・・・

 

友人の誰にも頼れない事を、カウンセラーに告白するクレイ。
彼はクレイの肉体的な異常の兆候を認め、その心の悩みに自分で直視する事を伝える。

 

クレイが帰路に着くと、彼の自室からブライスのテープが再生されている。。。
そのたじろぐ様子を尻目に、闇夜に消えていく何者かの影。。
その背中に、ブライスとモンティーの幻覚を見たクレイは、自分の症状の悪化に不安を覚える。。。

 

 

 

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・・最終章の初回にしては、冒頭から不安を煽りまくる展開がてんこ盛りでした。

ファーストシーズンから3年の時が経ち、クレイ役ディラン・ミネットのだいぶ野太くなった声が、その月日の速さを物語ってきます。。

 

自殺問題から少年裁判、やがて大人を信用できない子供達の冤罪計画へとテーマが移り変わってきた今回のシーズンでは、冒頭の注意喚起にもある通り、精神障害と贖罪の意識にピンスポットを当てそうです。

 

とうとう幻覚症状がはっきりと見え始めたクレイは相変わらずでも、ゲイに目覚め始めたアレックス?と、いつの間にかちゃっかり仲間の輪に入り込んでいるアメフト部のチャーリーには、ちょっとした違和感も。。

そんな中で一番微妙に感じたのは、すっかりジェシカやクレイとの絆を深めてるアニの存在。

トニーまでもが髪型を変え、それぞれのメインキャストがだいぶイメチェンしてきても、彼女に募る前回迄の自分の不信感は、まだ簡単には拭えなさそうですw

 

そして、今回の新たなキーパーソンになりそうなのはこの3人。

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ヒルクレスト高から強引に転入してきたウィンストン。モンティーの行きずりの恋人でもある

 

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最終章で登場してきたニューカマー。モンティーの妹だが兄のレイプ事件には、今のトコロ否定的?

 

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前回のシーズンから、ブライスの事件の真相を究明しようとする保安官。名前はまだない。。

 

まずは初回の紹介エピソードといった感じで、盛り上がりはそこまで感じられませんでしたが、とりあえずこの3人にアメフト部のディエゴを加えた4人が、クレイを過去の亡霊に縛る原因といったトコロでしょうか?


年のせいか、酒に溺れ始めていきそうなザック以外には、あまり親近感が湧かなくなってきちゃいましたが、ブライスのテープの告解が、クレイの内心にピッタリ重なる演出は中々にお見事。

人を頼れずに、誰かに頼ってもらう事で怯える自分を誤魔化そうとするのは、何も10代の若者だけに限った事じゃありません。

この悪化の一途を辿るクレイの幻覚症状は、自分を偽ってきた者ならではの歪み。

 

・・大人になって思えば、この自分の挫折や失敗を隠さずにさらけだす事が、ヒトに優しくなれる一番初めのキッカケに繋がると思うんだけどな。。。

 

ともあれ、ちょっとわかりにくい冒頭の葬儀シーンで、その棺の中に入ってしまっている次の犠牲者は誰なんでしょう・・・?

ファイナルシーズン第2話の感想はコチラ

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『13の理由』は、Netflixで鑑賞できます。

www.netflix.co

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