マリブのブログ

ミネルヴァの梟は迫り来る黄昏に飛び立つ

Netflix『13の理由』シーズン3第4話の私的な感想―タイラーの勇気―(ネタバレあり)

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13 Reasons Why Season3 Episode4/2019~(アメリカ)
製作総指揮:セレーナ・ゴメス
出演:ディラン・ミネット、ジャスティン・プレンティス、アリーシャ・ボー、デレク・ルーク、グレース・サイフ、ブレンダ・ストロング他

 現実にはない希望

最近の日本のテレビドラマを見て、なんだかツッコミを入れたくなるような事ってありませんか?

登場するキャラは皆どこかコミカルで感情が分かりやすく、社会規範にそぐわない行為は絶対にしない。。

 

犯罪者ですらしっかり交通ルールを守り、麻薬はおろか、煙草を吸いながらため息をついていた昔の大人達でさえも殆ど登場しない始末で、一言で言ってしまえば、あまりに人間味が感じられません。

 

じゃあ、リアルな描写ってなんなんだろう?

 

飲んだくれて街で騒ぐ若者、よそよそしい酒場での会話、喫煙所の隅で背を丸めているオヤジ達。。

でも、そんな人間達のドラマを見せられても、視聴者は全く楽しくありません。

 

だから、最近つくづく思うんですけど、、

 

ありえそうでありえない事を描くのが、ドラマの醍醐味だと思うんですよね。。

 

時系列を混乱させてくるアニのナレーションはともかく、『13の理由』は相変わらず、ここの描き方がめちゃくちゃ上手い。

周りから人が居なくなった事で、孤立感を深めていくブライス。
中絶をした事で、その相手をなんとなく愛せなくなっていくクロエ。

自分をブライスに売った元カレのジャスティンに、性欲が抑えきれないジェシカなんかは、一歩間違えばレイプが原因のセックス依存者にさえ受け取られかねないのに、そんな心に瑕を負った若者の様子を、このドラマは包み隠さず見せてきます。

 

けれど、そんな特殊な経験を持っている人間は、そう多くありません。

なのでここを無視して、マジョリティーにのみ受け入れられる体制のドラマ作りこそが、今日の業界が抱える闇と言えるのでしょう。

 

けれど、それを変えてくには、、、

 

理解できないマイノリティーの現実に、まずは一度、自分達が興味を持って関わってみる事が必要なのかもしれない。。。

 

人種の違うトニー達のゲイカップルや、ターゲットにされたタイラーを考えられない程気遣うクレイ達の様子等、日本人にはちょっとわかりづらい嘘みたいな設定の多い今回のニューシーズンですが、そこに製作側が意図的に織り交ぜた現実にはない事への希望を僅かに感じながら、ちょっと露骨な若者達のセックスシーンの数々には、一人で顔を赤らめてます。。

・・精励されたブリティッシュ訛りのくせに詮索好きなアニの違和感は、アーバンライフを送る無神経な都会人への嫌みの様にも感じられるけど・・w

 

シーズン3第3話の感想はコチラ

 

以下、『13の理由』シーズン3第4話のネタバレを含んだ上での感想です。

まだご覧になってない方はご注意下さい。

 

 

 

 

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 怒れる若い男

社会福祉士の訪問の為、タイラーの迎えに行けなくなった事をトニーに伝えるクレイ。
やがて、ネットニュースから流れてきた情報で、彼はブライスの死因が銃によるものだった事を知る。。

トニーの迎えに戸惑うタイラーは、残った銃のありかを頑なに話そうとはしない。
アニに、プロム時のタイラーの襲撃未遂事件の事を打ち明けるクレイ。
そして、再び彼が銃を人に向ける事があったとしても、自分はその前に立ち塞がろうとする事も。。
アニは、そんな正義心の強いクレイの身を案じ、タイラーへのその疑惑の目を、より一層と深めていく。

社会福祉士から現在の生活環境の質問を受け、クレイ達の一家への感謝を伝えるジャスティン。
しかし、彼の親権が未だに義理の父のセスの元にある事を告げられると、ジャスティンの表情は次第に曇ってゆく。

 

不気味な様子のタイラーを、陰で見守っているジェシカ。。

 

別れたアレックスに、心の癒えない様子のタイラーを押し付けるジェシカ。
すると、彼女のバイト先に現れたジャスティンに出くわし、アレックスは二人の関係を知ってしまう。。

映画館から出てくるクレイ、アニ、タイラー。
裏窓』の内容を上手く理解できないクレイに、タイラーはそのストーリー説明よりも、映画の見せたかった本質を語り始める。
アニはその頬に優しくキスをし、タイラーは照れ笑いを浮かべる。。

 

授業中にトイレへと席を立つタイラー。
クレイはその彼の後を追う。
やがて外へ出ていくタイラーにクレイが声をかけると・・
立ち小便をしていたタイラーは、追ってきたクレイの姿に驚く。
そして尚も詮索を続けるクレイは、タイラーの銃を受け取る段取りをつけるが・・・

クレイがアニ達とその後のプランを練っているとやってくるザック。
彼は不安な面持ちのジャスティン等を横目に、警察への通報を促す。
そして、ブライス殺しの動機がないと主張するクレイに、ザックは過去の思い出を語り始める。。

 

恐れからタイラーに詰め寄っているザックの様子。
やがて、彼はプロム当日の事をブライスが知っているとタイラーに告げる。

 

疑いの目を向けられている事に気づいたタイラーは、クレイを写真部の部室に誘き出す。
そこで、身の潔白を表すかのように、自分の鞄をクレイの前に差し出すタイラー。
しかし、その中身から銃は見つけられず。。

警察が学校へやってくるようになると、怯え始めるトニー。
しかしタイラーは、その彼の真意を自分への疑いの様に感じ始め・・

怒りの感情を吐き出すすべをタイラーに教えているトニー。
そして彼もまた、その感情に捕らわれ続けてきた事をタイラーに打ち明ける。。

 

スクールカウンセラーに、自分がブライスを殺した犯人だと思われている事を打ち明けるタイラー。
そしてそんな自分には、友達が一人も残っていない事も。。
しかし、その脳裏を微かな思い出が霞め・・

 

ジェシカに促されるまま、タイラーは銃乱射未遂事件の時の心境を語りだす。。
彼はその身に受けた暴行と偏見による痛みから解放される為には、その相手を傷つける事で傷を癒そうとした事を打ち明ける。。

 

社会正義を望む集団として、力を膨らましつつあるケイシー達は、ブライスの葬式当日でのデモを決断。
戸惑いを隠し切れないジェシカの横で、そのシュプレヒコールに疑問を呈すタイラー。
しかしその彼の声は、私刑を望むケイシーの声にかき消されてしまい・・

 

タイラーの家へとやってきたクレイは、彼の隙をみてそのデスクの上のラップトップを開けると・・
川辺に浮かぶブライスの死体写真を見つめ、クレイの顔は一瞬で凍りつく。。

 

・・プロムの日の夜からの悪夢をタイラーに語り始めるクレイ。
彼はその夢の中で、銃の引き金を引いていたタイラーに、自分が苦しみ続けている事を打ち明ける。。
そして、もしその時、自分が間違った答えをしていたら、その引き金は引かれていたのかと・・・・

 

タイラーの両親に招かれた夕食を終えると、クレイはその彼の部屋で、ナイフを取り出すタイラーの姿に怯え始める。。。

 

拳銃を自分のこめかみに当てながら、泣き崩れるタイラー。
翌日、彼はモンティーの処へ向かい謝罪の言葉を求めるが、その相手はされない。。
そして憤りを抱えたまま、彼が辿り着いたのはブライスの家。。

彼の拳銃を突きつけ、モンティーに自分のレイプの命令を与えた事を追求するが・・
ブライスはそれを否定するも、その責任を逃れようとはせず、タイラーの前に立ち尽くす。。

 

部屋のダクトから拳銃を取り出したタイラーは、それをクレイの元へと運ぶ。。
そしてブライスを殺しに行こうとした事も告白し、同時に彼の死体の第一発見者だった事実も打ち明ける。。

・・そして、その場所で自分が自殺を試みようとした事も。。。

ブライスの死体を目にした瞬間に、生への渇望が湧いてきた事を告げるタイラー。。

やがて彼は、クレイが疑念を向けていた鞄の中から、クレイが興味を示していた『裏窓』の中で使われていたカメラを取り出す。。

そのタイラーの激しい葛藤と優しさに気づく事の出来なかったクレイは、彼にかける言葉さえ見つからない。。。

 

アニを呼び出しているクレイ。
するとその要件をせっつく彼女へ、クレイは自分の使っていた自転車をプレゼントする。
そのアニの喜んだ表情。。

 

モネに集まっていたクレイ達は、タイラーから預かった銃を前に頭を抱えている。
そこでジャスティンによって、銃によって殺害されたと思われたいたブライスの死因が、誤報だった事を知らされると・・

 

タイラーの拳銃を手に、闇夜でセスと再会するジャスティン。。

警察の父親に同行していたアレックスは、彼らが川辺で見つけた空きビンの袋を見ると、その不安を募らせていく。。。

 

 

 

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 ・・何?このおしゃれエピソード。。

裏窓』で使われていたカメラをモチーフに、友情とその裏で忘れかけていた純粋な幼心を描く青春ドラマなんて、なんだか憎たらしいほど上手い映画のような設定。。。

だけど、『ストレンジャー・シングス』じゃあるまいし、現代の設定の映画館でヒッチコック映画を見る高校生なんているんだろうか・・? なんてwww

 

相変わらず友達への疑心暗鬼っぷりを見せつけてくるクレイは、ちょっと病的にも見えてくるけど、死を目の当たりにした事のある高校生は、これくらいナイーヴになってしまうものなのかも。。

 

なんだかアメリカの社会問題と化した、全ての銃乱射事件を起こした少年達へのレクイエムのような気がしてきてなりません。。

 

あの時もし、クレイの様な子がいてくれたら・・

あの時もし、血迷った少年達の前に誰かが立ち塞がっていたなら・・・

 

そんな寂しさを存分に味合わせるほどの上手いシナリオでしたが、リアルにはザックの様にこの手の問題を抱えた生徒は、警察や行政機関にその全てを委ねるのが賢明なのでしょう。

 

それでも、、

自分がもし、その場にいたら、、、

やっぱり、クレイの様な勇気を持てる人間でありたい。。。

・・・更にそれが、振り絞ったタイラーの勇気にも伝染していくのなら、仲間を救えなかったトラウマで一生を棒に振るよりも、本望なんじゃないかな・・・・

 

だけど、、

相変わらずクレイを振り回すアニが、どこまで彼の心の闇を理解しているのかを、そろそろ少しずつでもいーから見せ始めてほしいな。。

じゃないと、頑なに他人の問題に首を突っ込まない姿勢を貫く保守的な彼女の母親と、親子に見えなくなってきちゃいそうなので。。。

は・・ !

ひょっとしたら、アニ役のグレース・サイフ自体はイギリス生まれなので、同じ黒人だけどちょっと片言の英語をしゃべる彼女の母親とは、血の繋がっていない複雑な設定?

なんて、一人で勘ぐってしまってみたり。。。w

 

因みに、、

巻き上げレバーが左についているタイプの、ちょっと万人には使いづらいアンティークカメラ、エキザクタVXって、融通が利かずに、早とちりなクレイのメタファーだったんだろうか・・?

 

・・クリフハンガー的にアレックスの身に疑惑をかける謎の小ビンの正体は、どーせよくわかんないので、この際、完全に無視しておきますw

シーズン3第5話の感想はコチラ

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『13の理由』Netflixで観賞できます。 

www.netflix.co

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